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WNO《ルクレツィア・ボルジア》レビュー:絶賛!グリゴーロのジェンナーロ [ルクレツィア・ボルジア]

ワシントン・タイムズのレビュー、またもや"グリゴーロ最高!"
※NYタイムズに続きワシントン・ポストのレビュー"グリゴーロ最高!"も出ました。

11月1日プレミエのレビューが出ました。まずは、ニューヨークタイムズから。
↑1幕:オルシーニ(ケイト・オルドリッチ)、ジェンナーロ(ヴィットリオ・グリゴーロ)、ルクレツィア・ボルジア(ルネ・フレミング)

★初日レビュー:ニューヨーク・ タイムズ In a Man’s World, Poison Is Her Best Revenge
『若いイタリア人テノール、ヴィットリオ・グリゴーロが歌ったジェンナーロは、パンク風の金髪、SF的な肩パッド付きの身体にぴったりついたピチピチ、キンキラキンの格好で、フラッシュ・ゴードンみたい。フレミングは同じようにキンキラのピチピチの上着で登場したときはフラッシュ・ゴードンの宇宙女王みたいに見えた。
イタリアではポップスターとしての副業でも成功しているグリゴーロは、観客に絶対アピールするカリスマ性のある演技者だ。その声には、激しく突き抜け、悲哀を喚起する響きがある。ハンサムでエネルギーがあふれ、壁をひとっ飛びでとび越えることができる彼は、生まれつきの舞台人だ。だから、その歯切れの良い、男っぽい歌唱には、スポーツマン的な性質が感じられる。ただ、ある種の震えと、荒いレガートは、力ずくで声を押し出している可能性を示唆してした。』 ANTHONY TOMMASINI: November 2, 2008
※イタリアではポップ活動は全くしていませんし、CDもイタリア国内では発売していません。大新聞がこういういい加減なことを書くのはよくないです。
最後の文は、だからなんなの、ってなもんで、よくわかりませんが、「力ずくで声を押し出している可能性」って、私には力ずくではなく、これこそが彼の誰もまねのできない歌唱だと感じます。もし、力ずくで無理をして出している声であれば、最後まで続かないでしょう。「ある種の震え」、これもビブラートが必要なところにかけている可能性もあるし....今まで、《ボエーム》《ドン・カルロ》《ルチア》《椿姫》と全曲録音を聴きましたが、彼は、漫然と歌うタイプではなく、非常に考えた歌唱をしていると感じました。いずれにしても早く録音を聴いてみたいです。

レビューにもマッフィオ・オルシーニとの間には友情以上のものが感じられる....とありますが、私も、このオペラを見る時、それを感じていました。このオペラは、ジェンナーロが、自分が助かる道を捨て、友情に殉じて死んで行くという悲劇なんだ...ということを強く感じます。演出家の意図だと思いますが、上の写真を見ると、視覚的にもなにかそういうものを感じます。本当に、兄弟みたいじゃないですか。
フレミングとライモンディについては、本館でどうぞ。

★ワシントン・ ポスト 'Lucrezia Borgia': Uneven but Not Uneventful(リンク先に行けない場合はこちら
  
筆者は、初ヴィットリオ・グリゴーロだったそうですが、絶賛しています。
★ルクレチア・ボルジア:むらがあるが退屈ではない
ドニゼッティのルクレチア・ボルジアは、仮面をつけて登場する。1833年の初演でこの役を歌ったソプラノ Henriette Méric-Lalandeは抗議した。彼女はファンが彼女だとわからないのではないかと心配したのだ。

土曜日の公演で、ルネ・フレミングはこれがまさしく危険な冒険であることを証明した。フレミングはワシントンナショナルオペラに、(演出兼デザイナーのJohn Pascoeのおかげで)繊細な雲のような明るい緑色のマントに包まれ、顔を黄金色の仮面で隠して、初出演した。薄明かりの中で、最初はそれがフレミングなのかどうかわからなかった。そこで、彼女は舞台の前方に進み、仮面を外して見せた。

歌手を見せびらかすのがベルカントスタイルのやり方である。フレミングにとって、音楽的に快適な範囲を逸脱するという冒険をするのは相当勇気がいっただろう。彼女はこの分野は、当然ながら、ベッリーニの海賊を2001年にメトで、1998年にスカラ座でルクレチアを、すでにやったことがあるが、彼女にとってはやはり緊張を要する分野だ。ベルカントは耳をひきつける統一された一連の響きを要求する。大きな弧を描く、浮き浮きさせられる陽気な音楽なのだ。しかし、フレミングの歌はディテールの追究に集中する傾向がある。そのソフトなざらざら感のある声は太陽のしみ、並木道の木陰のようだ。美しいが、この役に求められる鋭さがない。

眠っている息子ジェンナーロ(彼は自分が彼女の息子であることを知らない。これが重要な点である)を見下ろしながら歌われる最初のアリアでは柔らかさが際立っていた。ジェンナーロが目を覚まし、舞台も彼と共に目覚めた。ヴィットリオ・グリゴーロはイタリアでスターの地位を築き、クロスオーバーへと活動範囲を広げている若いイタリア人テノールだ。彼のアルバム"In the Hands of Love"はイギリスでチャート入りを果たした。ワシントンの観客は昨年ボエームでのデビューで彼を知っている。しかし、私は彼をはじめて聴いた。私はわくわくさせられた。その声は明るく輝かしく、強く安定しており、刺激的で興奮を呼ぶ。鮮やかに響き渡る金属的な声は最高のイタリアテノールを思わせる。公演を通して、同じレベルを保ち、私以外の観客全員をも彼に注目させた。一幕で彼が歌い始めると、フレミングは即座に彼に合わせた。その二重唱はこの公演のハイライトだった。まさしく、今シーズンのハイライトだった。

だが、二重唱の後、一幕を締めくくるわきおこる重唱は酷くて、必要以上に混乱していた。合唱と重唱は、指揮者プラシド・ドミンゴの重厚な指揮にもかかわらず、少々不揃いだった。このでこぼこが、刺激的だが、むらのある公演にした。.......

ルクレチアの夫、アルフォンソ役のベテラン、ルッジェーロ・ライモンディのアリアも重厚だった。ライモンディはそのよく知られた声の存在感を示したが、フレミングとグリゴーロが舞台に登場した時にはじめて全開、ペースを整えた。オルシーニ役及びワシントンオペラデビューの、自信満々のメゾソプラノのケイト・オルドリッチは、なかなかよかったが、その聴かせどころのアリアの最後まで、彼女の最善のゆったりとした豊かな響きを聴かせてくれなかった。

このオペラは他の同系のものに比べて、そのアンサンブルにかかっているところが大なので、多くはDomingo-Cafritz Young Artist Programの現在のメンバーから選ばれた脇役たちのむらは酷かった。Rustighello 役のテノールRobert Cantrellはよかった。その素晴らしく強いテノールは目立っていた。良いテノールが二人もいるのは珍しいので、ワシントンオペラは誇ってもよい。

フレミングに関しては、大衆的(通俗的?)には成功、賛否両論。この役に選ばれた信用に値するしやり遂げたがんばりは評価できる。気楽な領域から出たことは、彼女をその悪い習慣からも離れさせた。彼女は率直に真摯に歌った。その声の輪郭にある、こびて品をつくる特徴がほぼ影を潜めていた。彼女は決して偉大なベルカントのヒロインにはなることはないだろう。二幕のライモンディとの二重唱は、だれにとっても難しいが、彼女がうまくできるもの以上のことを彼女に強要していた。この役の超高音は彼女の自由になるものではない。しかし、注目すべきところもあった。低音はよかったし、コロラトューラには正確なものもあった。特に、最後の華麗で勇壮なアリアはよかった。このアリアはいつも歌われるわけではない。ドニゼッティは、Méric-Lalande にしつこくせがまれてこれを書いたが、後の上演ではひっこめた。ドニゼッティは母親が息子の遺体を見下ろしながらの大げさな見せ場は見苦しいと感じていた。しかし、ワシントンオペラはフレミングにこの見せ場を与えた。ただし、多少穏やかで、迫力もあまりなかった。パスコーは大団円用に彼女に黄金の鎧を準備したが、露出過多という感じは残った。 Anne Midgette:Monday, November 3, 2008
※Anne Midgetteは6月にNYタイムズからワシントンポストの音楽評論チーフに。「王様と私」はブレスリンと彼女の共著。

★WNO"Lucrezia Borgia"紹介記事:Donizetti comes out
現シカゴ・オペラ総裁ブライアン・ディッキー(Brian Dickie)氏がブログでこの公演を紹介しています。
ディッキー氏は、グリゴーロのことを高く買っているようです。こういう立場にある人にも評価されているんですね。

★ドニゼッティ作曲《ルクレツィア・ボルジア》新演出 2008年11月1, 5, 7, 9, 11, 15, 17日 全7公演

指揮:プラシド・ドミンゴ
演出・舞台美術・衣裳:ジョン・パスコー
衣裳補:ティム・バロー
照明:ジェフ・ブルッカーホフ
キャスト:
ルクレツィア・ボルジア:ルネ・フレミング
     ソンドラ・ラドヴァノフスキー(7, 15, 17)
ジェンナーロ:ヴィットリオ・グリゴーロ
アルフォンソ公:ルッジェーロ・ライモンディ
マッフィオ・オルシーニ:ケイト・オルドリッチ
ルスティンゲッロ:インシ・チャン
キャスト詳細:ワシントン・ナショナル・オペラ

★右の写真をクリックするとグリゴーロの部分だけ抜粋したWNO紹介ビデオクリップをご覧いただけます。

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コメント 3

ペーターのファンです。

舞台の雰囲気が伝わってくる、臨場感のある写真ですね。グリゴーロの熱演が目に浮かびます。
レビューはおおむね好評としても、「力ずく云々・・・」はちょっと理解に苦しみます。想像ですが、評判の高い若いテノールに何かしら苦言を呈してみせた可能性もあるように思います。聴衆に賞賛されていることは確実でしょうから、評論家として格好をつけるというか。たまにいますよね、そんな評論家。

by ペーターのファンです。 (2008-11-03 18:30) 

babyfairy

このフラッシュゴードン張りの演出そのものや、メトの女王殿下の事はともかく、グリゴーロ君の歌を早く聴いてみたいです。 彼の歌唱は、『ルチア』の時にも感じましたが、単に力強いだけではありません。ちゃんと感情を込め、必要な歌唱技巧を凝らしてあると思います。力ずくで歌っているのではなく、生まれつきこういうスリリングな声の持ち主なので、ほんとにこの『力ずくで』と言うくだりは余計ですね。
by babyfairy (2008-11-03 23:58) 

keyaki

ペーターのファンさん、 babyfairyさん
グリゴーロ、快進撃が続きますね。評価するかしないかはともかくとして、並のテノールでないことは確かですね。
グリゴーロの生舞台をご覧になった、babyfairyさんは、ワシントンポストのはじめてグリゴーロを見た,聞いたという筆者の感動が、よくお分かりになるのではとおもいます。
ニューヨークタイムズとワシントンポスト、共に彼の長所を的確に表現しているとおもいます。
by keyaki (2008-11-04 00:31) 

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