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シカゴ・SUN TIMES記事:グリゴーロ発言に波紋 ★ニューアルバムはドミンゴと二重唱も [インタビュー&記事]

7月26日シカゴのミレニアム・パークで開催された《パヴァロッティ追悼コンサート》は大成功に終わり、グリゴーロも「皆さんのエネルギーと愛で信じられないくらい素晴く楽しいコンサートでした....」とメッセージを残しています。このコンサートの紹介も兼ねてグリゴーロのインタビュー記事がシカゴ・SUN TIMESにアップされました。
来年早々(多分2月)にリリースされる予定のグリゴーロの2枚目のアルバムについて話しています。彼自身が共同制作者となるもので、ドミンゴ(写真右)との二重唱もあるそうです。
「さらに僕らしく、さらに僕の音楽になります。そして、より'rockier.'になるでしょう。プラシドと一緒に仕事をするのは名誉なことです。....」と語っています。
"co-wrote"ということは自分が書いた曲もあるってことかな。ドミンゴ(写真右)とのオペラの二重唱もあるそうです。ドミンゴはバリトンのパートを歌うのかしら? 本物のオペラ歌手が歌うオペラアリアも加えられるということのようですから、オペラファンとしては楽しみです。

 あとの内容は、彼の簡単な略歴と、他のクロスオーバー歌手との違いなどが書かれていますが、本物のオペラ歌手の発言としては当たり前のことなのですが、面白くない人もいるようです。確かにかなり辛辣かも。

 この記事が波紋を呼んでいるのをたまたま目撃してしまいました。なぜか、イル・ディーヴォのファンフォーラムにグリゴーロのトピックがあるのですが、そこにこの記事をアップしたお節介さんがいて、わざわざ波風たててました。「イル・ディーヴォも好きだけど、キリンさん、じゃないヴィットリオも好きです...なんて言ってるあんたたち、この生意気な言い草はなによ!」というわけです。 これに対して、「私はヴィットリオが好きです。彼が自分の見解を持つのは当然ですが、彼と同じ考えではないということもあり得ます。私は彼とイル・ディーヴォが好きで、その声を楽しんでいます。ポペラ対オペラといった争いには関心がありません。彼らの歌そのものが、そのまま好きなだけです。」なかなか上手いコメントですね。

 本物のオペラ主体で聞いている私たちにとっては、「本物のオペラ歌手」と、彼らの違いは歴然としていて、当たり前のことなのですが、それが理解できないようです。イル・ディーヴォのファンをグリゴーロ生意気〜と怒らせた部分は、
『周知のように、"アメリカのアイドル"の大黒柱であるサイモン・コーウェルは、イル・ディーヴォのために歌手のオーディションをやっていたとき、グリゴーロをグループに誘った。「だけど、僕はオペラ公演を続けたかったのでイル・ディーヴォには参加しないことに決めました。彼らはオペラという文化を理解していませんし、正しいテクニックで歌うことはできません」』
という部分のようです。イル・ディーヴォの中には、クラシックの声楽教育を受けて、オペラの舞台にも立っていたことがある人もいるようですが、彼らは、すでにオペラを捨てています。なぜ捨てたかは、私にはとても良く理解できます。オペラは、大変なんですよ。うるさい評論家もいますし、ちょっとでも不出来だとブーを叫ぶ聴衆もいますし、金儲けだけではやってられません。オペラを愛し、オペラを歌いたいというやむにやまれぬ芸術的エネルギーが必要なんです。グリゴーロが言っているように、オペラの舞台に立つということは、特別なテクニックが必要ですし、日々研鑽を積まなければオペラ歌手として通用しなくなるのは、周知の事実です。アリアだけをコンサートで歌う歌手は、オペラ歌手とは言えません。「本物のオペラ」を知らない人たちは、それが理解できないようです。だから、グリゴーロも言っているように、一度オペラハウスに来てみて!ということなんですよね。
以下記事全文です。

若いオペラスター・グリゴーロ、シカゴ・デビューをマエストロ(パヴァロッティ)に捧げる

2008.7.26 ローラ・エミリック

日の出の勢いの若いイタリア人テノール、ヴィットリオ・グリゴーロが、自分はPBSに定期出演している未熟なクロスオーバースターではないと主張すれば、これら公共テレビによる特別チャリティ番組(ブレッジドライブ)のひとつでおこっているように、複数の鐘が鳴りはじめるかもしれない。

そうは言っても、彼のデビューディスク「ヴィットリオ(Decca)」は、オペラ的傾向の強いジョシュ・グローバン、ラッセル・ワトソン、イル・ディーヴォの仕事と同じように聞こえる。しかし、「ヴィットリオ」の巧みにつくられた見かけの下に、本物のカルーソーの声が潜んでいる。今週ローマからグリゴーロは、「そんなに容易なことだったら、だれでもオペラ歌手になれるだろう。ポール・ポッツ(イギリスの才能という生放送のショー番組のお陰で国際的なヴォーカル・センセーションを起こしたウェールズ人の店員)のような人たちは、良くない。こういうショーは人々の夢を喰いものにしている。だが、聴衆には本当に歌えるのはだれかということはわかるものだ。聴衆をだますことはできない」とインタービューで語った。

グローバン、ワトソン、ポッツ、イル・ディーヴォと違って、グリゴーロは本物のオペラ歌手だ。晩年のルチアーノ・パヴァロッティがかわいがったグリゴーロは23歳でミラノの歴史的なスカラ座にデビューしたし、ローマ、ヴェローナ、ヴェネチア、バルセロナ、その他の劇場で、リッカルド・ムーティ、リッカルド・シャイー、ロリン・マゼールなどの有名な指揮者の下で《リゴレット》《オテロ》《ドン・ジョヴァンニ》《ウェルテル》などのオペラで様々な役を歌っている。

グリゴーロは、昨秋、ワシントン・ナショナル・オペラにプッチーニの《ボエーム》に出演した後、土曜日、グランパークオーケストラとの共演でパヴァロッティに捧げるヴェネチアの夜というプログラムでシカゴ・デビューをする。このコンサートはWFMT-FM (98.7)で放送される。

昨年9月に71歳で亡くなったパヴァロッティは、ほぼ20年前にローマで《トスカ》に出演したとき、共演したグリゴーロの才能を認めた。「そのときはほんの子供でしたが、マエストロから多くのことを学びました」と現在31歳のグリゴーロは言う。「何年もの間、ルチアーノが指導者でした。常に音楽を尊敬して、心を込めるように言われました。コンサートの始めにやりすぎないことが大事だとも言われました。テニスの試合のときのように、エネルギーを管理するべきなのです。試合は一回ではありませんし。きょうのシカゴでの公演を、多くの事を与えてくれたパヴァロッティに捧げます」

グリゴーロは、クラシックに根を下ろしつつ、自分の音楽を可能な最大多数の聴衆に届けたいと望んでいる。「僕のアルバムで、オペラをポップスに繋げようとしました。二つの非常に異なるものを関連づけようとしました。二つの世界に境界はほんとうは存在しません。僕たちは、人々をオペラに来させなければなりません。これは文化の問題です。」

周知のように、「アメリカのアイドル」の大黒柱であるサイモン・コーウェルは、イル・ディーヴォのために歌手のオーディションをやっていたとき、グリゴーロをグループに誘った。「だけど、僕はオペラ公演を続けたかったのでイル・ディーヴォには参加しないことに決めました。彼らはオペラという文化を理解していませんし、正しいテクニックで歌うことはできません」

この発言は尊大に聞こえるかもしれないが、賛同する人もいるだろう。アリアを歌うグリゴーロを聴けば、彼が単にスタジオでつくられるだけの「ポペラ」歌手でないことが、即座に明白になる。(彼の公式サイトで彼が歌う"Che gelida manina"などを聴いてみてください)彼の「ボエーム」について、ワシントン・ポスト紙のクラシック批評家ティム・ペイジは次のように書いている。「ヴィットリオ・グリゴーロは素晴らしい若手音楽家だ。ロドルフォを新鮮で、甘く、センシティブなテノールの声で歌う。これは、明るく鳴り響かせる力があってこそ可能なのだ」

グリゴーロの次の公演はドニゼッティで、9月チューリヒ・オペラハウスでの 《ルチア》、11月ワシントン・ナショナル・オペラでの《ルクレチア・ボルジア》である。次のCDは、彼自身が共同作曲、共同制作者となるもので、来年の初めに予定されている。大オペラ歌手プラシド・ドミンゴとのデュエットがある。「さらに僕らしく、さらに僕の音楽になります。そして、より"rockier"になるでしょう。プラシドと一緒に仕事をするのは名誉なことです。彼はオペラハウスが若い人を獲得することの重要さを理解しています」

グリゴーロはパヴァロッティ同様、ドミンゴからも多くを学んだ。「彼が、全てのこと、全ての人に与える大きなエネルギーと情熱が好きです。時間はとても短いけど、彼は今もみんなのために時間を作っています。僕もこれを心がけたいと思っています」



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コメント 8

rosina

>彼らはオペラという文化を理解していませんし、正しいテクニックで歌うことはできません

って、真実ではありませんか? 

>今週ローマからグリゴーロは、「そんなに容易なことだったら、だれでもオペラ歌手になれるだろう。ポール・ポッツ(イギリスの才能という生放送のショー番組のお陰で国際的なヴォーカル・センセーションを起こしたウェールズ人の店員)のような人たちは、良くない。こういうショーは人々の夢を喰いものにしている。だが、聴衆には本当に歌えるのはだれかということはわかるものだ。聴衆をだますことはできない」とインタービューで語った。

これも『まさにおっしゃる通り』です。 あんな紛いもの聴かされる位なら、最初からポップスと割り切って歌っている歌手の方が良いですもん。
オペラ、特にイタリアのオペラは、イタリア文化そのものと言う面があるから、きっとイタリア人であるグリゴーロ君は余計にその『英国風味のポペラ』に違和感を感じるのではないでしょうか。
by rosina (2008-08-02 03:37) 

keyaki

rosinaさん
そう、まさに正論なんですが、世の中正論を言うととかく風当たりが強くなりますからね。

オペラを一度でも見れば、過去のことを持ち出して、誰それもオペラ歌手ですよ!なんて恥ずかしくて言えないと思うんですけど。
確か、Youtubeに、イル・ディーヴォのメンバーのマントヴァ公爵がアップされていますが、はっきりいって学芸会並、若い時のでしょうから歌唱技術のことは言ってもしょうがないですが、デレデレとした動きで品がない、とても公爵には見えません。最初スパラフチーレかと思いました。彼は、イル・ディーヴォのメンバーに加わって正解です。

ソリストとしてやっていっているクロスオーバーさんたちは、それなりの個性で売っているとおもいますが、ポッツとイル・ディーヴォは、サイモン・コーウェルの商品ですよね。サイモン・コーウェルの手腕で売れているだけなのは、明らかでしょう。

ボチェッリについても、彼は盲目という特殊事情がありますが、彼はオペラ歌手ではないです。なのに、なぜかオペラの舞台に立っている....
今まで、ボチェッリには、全く興味がなかったのですが、彼をあそこまで有名にしたマネージャーが、彼と訣別して、今はグリゴーロのマネージャーだそうです。はっきりは言ってませんが、どうやら、ボチェッリがオペラを歌いたがることがマネージャーをやめた原因のようなかんじです。ボチェッリがオペラの舞台に立つということは、本当に周りの人たちの苦労は大変なものなんだそうです。そのへんはボチェッリは、ハンディーのあるものに奉仕するのが当たり前と思っているのかな..とおもっちゃいますね。なんでも、ハンディーに対する質問は一切受けつけないことになっているそうです。

それにしても、グリゴーロ君、はっきりものを言いますね。
ボチェッリともなんかあったみたいだし.....
by keyaki (2008-08-02 10:20) 

Sardanapalus

いわゆるクロスオーバー歌手とオペラ歌手の間には、大きな溝があると思います。クロスオーバー歌手達は、確かに歌は上手いですが、オペラ歌手としてやっていけるほどではないといつも感じています。ボチェッリのデビューアルバムのように、新しく曲を書いてもらって歌うのが筋でしょうが、既に曲が知られているオペラのアリアを歌って稼ぎたいという頭がプロデューサーにはあるのでしょう。歌手も、人気やお金がすぐに稼げるオペラアリアは重宝するでしょうし。そういうCDしか知らないファン達にとっては、このグリゴーロの発言は頭にくるでしょうね。個人的には、
>彼らの歌そのものが、そのまま好きなだけです
というスタンスに賛成です。特にIl Divoのファンはちょっと熱狂的すぎるようで、こういう騒ぎになるたびに辟易してしまいます。
by Sardanapalus (2008-08-03 13:02) 

keyaki

Sardanapalusさん、あちらではありがとうございました。
カッコの中は、筆者さんのジョークっぽいですね。

グリゴーロの言っている、「彼らはオペラという文化を理解していない」は、rosinaさんもおっしゃっているように、イタリアとかドイツは、オペラは彼らの文化なんで、オペラ歌手は、その文化の担い手という自負があると思います。
今まで、クロスオーバーには全く興味がなくて聞いたことがありませんでしたが、クロスオーバー歌手の歌うオペラのアリアをYoutubeで2、3聞きましたが、オペラのアリアは「本物のオペラ歌手」にまかせておいて欲しいですね。
by keyaki (2008-08-04 00:25) 

rosina

>イタリアとかドイツは、オペラは彼らの文化なんで、オペラ歌手は、その文化の担い手という自負がある

例えば日本の歌舞伎の海老蔵とか狂言の野村萬斎等は、その伝統を守った舞台の他にも映画に出たりもしていますよね。でも相変わらず彼らの肩書きは歌舞伎役者であり狂言師である訳で、グリゴーロ君の場合も肩書きはあくまでもオペラ歌手。日本の伝統芸能と違って世襲制とは限らないけれど、絶対、その自負はあると思います。

>ボッチェリ

とか、ジェンキンスを最高のオペラ・スターだと信じている人のブログに行き当たった事がありますが、ちょっとオペラを知っている人なら突っ込みどころ満載で笑えました。
by rosina (2008-08-04 08:56) 

keyaki

rosinaさん
そう、そう、
>グリゴーロ君の場合も肩書きはあくまでもオペラ歌手

イギリスのClassical Advisory Panelというヒットチャートの会社? が、彼のアルバムを、クラシックアルバムチャートからはずしたことに、困惑したようです。つまり、彼は、クラシックのトレーニングとエネルギーとフィーリングをポップスと融合させたもので、ポップとクラシック両方のジャンルにまたがってるんだから、Classical Advisory Panelのやりかたは、おかしい....ということのようです。
これは、ポリドール側も、誤算だったようで、抗議をしたようですけど。クラシックのヒットチャートなら1位になった可能性もあったんでしょうね。
この時のインタビューで、
「オペラやクラシックの勉強をしていない一部の英国の歌手のアルバムが、クラシックのチャートに入ってるのはなんなんだろうね」と笑ってたそうです。

まあ、彼のアルバムに一曲でもオペラのアリアを入れておけばよかったんでしょうけど、それは、本物のオペラ歌手としてはやりたくないですよね。

最近、シュロットがアリア集を出しましたが、何枚くらい売れる予定で発売してるんでしょうね。レコード会社は採算とれるのかしら。グリゴーロ君みたいに契約金百万ポンドなんてことはあり得ないけど。バス歌手のアルバムなんてそうそう売れるものではないし、それにイタリア語が当たり前のフィリッポのアリアとプロチダのアリアをフランス語で歌っちゃている理由がわかりませんね。
まだ、自分のレパートリーでないものをイタリア語で歌うと上手じゃないのがバレちゃうから...なんて邪推しますね。
by keyaki (2008-08-04 10:10) 

euridice

また昔の話ですが、ホフマンの伝記に彼の最初のアルバム発売日の話題のところにこんな会話が載ってます。
「信じられないよ。今日、間違いなく2000枚売れたなんて。たった1日でだぞ。クラシック・レコードだったら、最終的にそれだけ売れれば多いほうだ。」

1983年発売のホフマンのワーグナーアリア集『ペーター・ホフマン、リヒャルト・ワーグナーを歌う』は「クラシックのレコードとしては今日にいたるまで例外的によく売れている」ということです。
by euridice (2008-08-04 14:56) 

keyaki

euridiceさん、CDが売れていた頃で、年間2000枚売れればいい方ということは、今は.....
ライモンディのアリアとか歌曲ごちゃ混ぜのCDも20年ぶりくらいに再販されますが、もう本人関係無しで発売元が、適当にやってるんでしょうね。
しかし、グリゴーロ君の契約金100万ポンドってことは、ポップだと当たれば、それ以上に儲かるってことですよね。よくわからん世界ですわ。
by keyaki (2008-08-04 21:51) 

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