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シドニー交響楽団:ロッシーニ・ガラ《スタバト・マーテル》 《セビリアの理髪師》伯爵のセレナーデ ["Stabat Mater" Rossini]

ロッシーニ・ガラ:シドニー・オペラハウス・コンサートホール 2007年5月17,19日

ジャンルイジ・ジェルメッティ指揮
シドニー交響楽団
Members of Opera Australia合唱団、Sydney Philharmonia合唱団
ソリスト:
アンナ・リタ・タリエント(ソプラノ)
ダニエラ・バルチェッローナ(メゾソプラノ)
ヴィットリオ・グリゴーロ(テノール)
ロベルト・スカンディウッツィ(バス)
プログラム:
・セミラーミデ序曲
・エジプトのモゼ:モゼの祈り"Dal tuo stellato soglio"(バス独唱)
・セビリアの理髪師:Se il mio nome saper voi bramate (テノール独唱)

・セミラーミデ:二重唱"Ebben, a te, ferisci"(ソプラノ、メゾ)
★スタバト・マーテル
 (プログラム)

 右の写真をクリックするとシドニー交響楽団HPのこのガラコンサートの紹介記事にリンクしていますが、ヴィットリオ・グリゴーロが来るぞ〜とスター扱いです。
 オペラだけでなく、ポップス(ポペラ)歌手としても世界的であること、オペラに関しては、13才で《トスカ》の羊飼いの役でデビュー、その後、多数の奨学金を受け、2000年には弱冠23才で、ミラノ・スカラ座にもデビューして、若いテノール歌手として注目をあびている.....と他の歌手そっちのけで紹介しています。
 前年の10月に"Hands of Love"の販売促進ツアーで、すでにシドニーを訪れていて、その時の記事"Italy's 'Little Pavarotti' sings in poppo voce"(2006.10.24)は、なかなか面白いです。
「彼は、オペラもポップスも歌うハイブリッド歌手、つまり"popera"歌手として知られていたい。クロスオーバーではない.....ポップスも歌うが、明日はリゴレットを歌うことができる....ヴィットリオが、クロスオーバー歌手だと言うならば、僕の経歴もオペラも消すことになる....シドニーに来る前に、アメリカでドミンゴと会って、ワシントンDCで《ボエーム》、ロサンゼルスで《コジ・ファン・トゥッテ》を歌う契約をした.....」あとは、リンク先でどうぞ。

★レビュー:Gelmetti's fine staging of the sacred
 テノールのビットリオ・グリゴーロは、イル・ディーヴォに参加の誘いを断って、自らのポペラのソロアルバムを録音するなど、四人のソリストのうちで最高のプロフィールを備えている。
 彼はものすごく外向的で陽気な演奏者だった。豊かな色彩感あふれる声質、感動でぞくぞくさせられる力強さと優美でダイナミックなコントロールを示した。
 グリゴーロはジェルメッティのギター伴奏で、セビリアの理髪師の一幕から伯爵のカンツォーネを歌った。それは熱くウィットに富んでいた。しかし、《スタバト・マーテル》のアリアは、不明瞭なディクションと感性のないフレージングによって台無しになった。それはまた、演奏の限界を露呈した。とにかくこのアリアは悲しみの表現であって、女を誘惑するためのものではないのだ
ますます聞いてみたいです.....

★レビュー:Sydney Morning Herald, May 19-20 2007
しかし、この公演でだれにもまして人気者だったのはテノールのヴィットリオ・グリゴーロだった。グリゴーロがカーテンコールでの花束を贈ったご婦人とは大いに意見が一致するところだろう。彼は天性の才能のままに《スタバト・マーテル》を歌った。表現過多だった。高音域では、愛想をふりまき、セクシーに、盛り上げ、低音域では大人しくなった。
セクシーな《スタバト・マーテル》....聞いてみたいなぁ...

★レビュー:Sydney Symphony Gala: Rossini Stabat Mater(2007.5.19)
個人のブログですが、このレビューがグリゴーロ崇拝フォーラムで波紋をおこしたということですので、取り上げてみました。
『グリゴーロについては判断保留状態。疑問の余地のある(そして、安っぽい)クロスオーバーのキャリアはともかくとして、彼には間違いなく本物の声がある。しかし、彼もまたこのこと(声があること)と、私から見れば、楽しくやっているというよりは、計算しているようにみえるような悪ふざけをするなど、彼の聴衆の一部に対する彼の影響力に気がついているが、ちょっと自覚しすぎているようだ(つまり、いい気になっているといいたいんでしょう)彼の"Se il nome saper voi bramate"は、非常に美しかったが、演奏が続くにつれて、彼が一つ一つの音符を最高にうっとりさせようとして絞り出すように確定するのと、同様に、落ち着かないフレージングと頻繁に激しく息を吸い込むことの原因となっている、彼の張りつめた、感傷的な歌唱に飽きてきた。他の人が歌っている間、楽譜のページをぱらぱらめくったり、額をぬぐったり、ジャケットをいじったりするなど、じっとすわっている能力の欠如も、私を味方にできなかった原因だ。オペラの演出家はこういうちょっと躁状態のエネルギーを効果的に利用することができるのだろうけど、コンサートでは彼の態度は、私には場違いに思えた。』
これは、クラシック愛好者のいやらしさがにじみ出てますね。グリゴーロのフォーラムがショックを受けたのは、最初のクロスオーバーのところでしょう。あとの、ごそごそ落ち着きがない...というのは、ま、事実でしょうから。でも、これを書いた人は、グリゴーロばかり見てたってことじゃないですか!

《スタバト・マーテル》には、はてな?だった音楽評論家さん絶賛、コチコチのクラシック愛好家のブロガーには声がいいのを自慢し過ぎとかで不評の《セビリアの理髪師》のセレナーデが、Youtubeにアップされています。
伯爵のセレナーデ「私の名が知りたければ」

この演奏にはちょっとした趣向があって、グリゴーロは、自分が歌う番なのに、突然ジェルメッティに、ちょっと待てってとか言って、バックステージに走って行って上着を脱いで、ギターを抱えて戻って来てたそうです。それが、とってもおかしかった....とファンが報告しています。(こういうのもブロガーさんは気に入らなかったんでしょうね)
このあと、《スタバト・マーテル》の演奏があったわけですが、グリゴーロは、シャツとソックスを替えて出て来たそうです。シャツは黒だったので全身黒、ベルトのバックルが"V"だったとか、ソックスも変えてたとか、ファンの人たちは観察が細かいです。汗を拭いた...というのもファンの報告では、「《スタバト・マーテル》のソロのあと、彼は、とっても汗をかいてたけど、問題ないです!ちゃんと用意してました。ティッシュをさっと取り出して、顔と首と胸?もだったかな、汗を拭きました。」ということです。最後の拍手もすごくて、ヴィットリオがふざけたりして楽しかった....前列のご婦人に自分の花束を渡して、ジェルメッティには、バラの茎を渡したんだそうです。
ポップス系フォーラムでの報告ですが、グリゴーロのポップスのファンたちが、初オペラ、初コンサート鑑賞に行って感想を報告していますが、とてもほほえましいです。グリゴーロが、ポップスの若いファンたちが、オペラを見に来てくれるかも知れない...と言っていますが、そうなっているようです。オペラ愛好家は、彼のポップス活動を無視しているのかもしれませんが、ポップスファンは、彼が出演しているということで、ちゃんと見に行ってるんですよね。
ソリストさんたち、グリゴーロはスカンディウッツィに拍手

関連記事:
ロッシーニ・ガラ(シドニー)前日のインタビュー(2007.5.16):"Il Divo"のことも....
RRと指揮者(11)カルロ・マリア・ジュリーニスタバト・マーテルVideoClip

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コメント 7

hasida

私の好みでは、ちょいと濃ゆ過ぎるリンドーロ、でした。
ガラコンサート向けの歌い方、だとしても。
ちなみに、私のデフォルトは、そう沢山聞いているわけではないですが、フローレスとディドナートがメトで共演していたヴィデオです。
by hasida (2008-07-06 22:36) 

keyaki

hasidaさん、いらっしゃいませ。
日本では、多分ほとんど知られてないですけど、どうやら、イタリアでは大切に,大切に育てたのに、造反して伝統主義者の大人たちをはらはらさせているようです。
私は、リンドーロにはデフォルトはないので、ブレイクもフローレスもシラグーザも、それぞれ好きです。グリゴーロのも全部聞いてみたいです。
by keyaki (2008-07-06 23:00) 

rosina

私はこのグリゴーロ君のセレナードをとっても気に入っています。
茶目っ気たっぷりで、声は艶があって輝かしくて。
一方、フローレスのアルマヴィーヴァは、少年っぽい清涼剤的な声と、流れるようなアジリタが好きです。
たぶん、シラグーザはこの二人の中間位の感じかな?等と勝手に位置づけていますが、ロッシーニの洗練を保持しながらも、どこかイタリア的な所が好きです。

>グリゴーロのも全部聞いてみたいです。

私も聴いてみたいですね〜。もう一度くらい、どこかで歌ってくれないでしょうか(そしたら聞きに行くのに)。
by rosina (2008-07-07 08:15) 

euridice

>♪伯爵のセレナーデ「私の名が知りたければ」
おもしろかったです^^++

それにしても、記事のブロガーさんを含めて、
こういう旺盛なサービス精神と感情表現を嫌うのは、一部の
クラシックファンの特徴であることは間違いないと思います。
by euridice (2008-07-07 10:48) 

rosina

管理人さま、
事後報告(失礼いたします)なのですが、この記事を読んで、その感想等を私のブログの方でも記事にさせて頂いたので、こちらにトラックバックさせて頂きました。
by rosina (2008-07-07 11:51) 

keyaki

rosinaさん、ありがとうございます。
関心を持って頂いて嬉しいです。さっそくお伺いさせていただきます。
by keyaki (2008-07-07 20:57) 

keyaki

euridiceさん、感情過多と言われるのもわかりますが、たんたんと歌うより面白いですよね。彼は、どうやら若い人にアピールするように、若い人にオペラはたいくつと思わせないように、いろいろ考えているようです。
感情過多も確信犯のようです。
指揮者もそれを認めて好きに歌わせてるってことですよね。
by keyaki (2008-07-07 21:02) 

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