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ロッシーニ・ガラ(シドニー)前日のインタビュー(2007.5.16):"Il Divo"のことも.... [インタビュー&記事]

 2007年5月17,19日に、オーストラリア、シドニーで開催されたロッシーニ・コンサートのリハーサルの合間のインタビューです。
 このコンサートは、ローマ歌劇場首席指揮者でもあり、シドニー交響楽団音楽監督でもあるジャンルイジ・ジェルメッティ(Gianluigi Gelmetti,1945.9.11 - )の指揮で、メインがロッシーニの《スタバト・マーテル》で、ヴィットリオ・グリゴーロは、ソリストとして参加しています。彼は、すでにオーストラリアでも、ポップス歌手として人気があったようですが、オペラ歌手としては、未知数ということで、インタビューをしたようです。誘われたが断ったという"イル・ディーヴォ"のことにも触れています。

リトル・パヴァロッティは責任重大
大きな期待が寄せられている元レーサーヴィットリオ・グリゴーロは、明日シドニー・オペラハウスで、ロッシーニのスタバトマーテルのソリストを務める。そのためにリハーサル中 (写真右上)
聞き手・ポール・ビッビィ(2007.5.16 )

ヴィットリオ・グリゴーロが新登場の容姿端麗なポップスターだということは間違いない。彼は、高尚なクラシック音楽家としての衣をまといつつ、金になるポップ・クラシック・クロスオーバー市場に参入した。

ファッションとしての無精髭、ボタンをはずしたアルマーニのシャツ、そして室内でもサングラスをかける習慣などの全てが、この30歳の男が、モーツァルトやロッシーニなどよりも、自分自身のイメージのほうに関心を持っているのだという印象を増幅している。

しかし、この尖ったあごの色男は、他のクロースオーバー歌手たちとは違う。つまり、グリゴーロは本格的に歌えるのだ。(グリゴーロは、自分がポップスを歌うのは、クロスオーバーではないと言っています)

彼のソロアルバム"Hands of Love"における感情過多のカバー曲の背景にあるものは、グリゴーロを世界の最高のオペラハウスに出演させる、そして、ルチアーノ・パヴァロッティを感激させ、パヴァロッティーノと言わしめた、声なのだ。

明日、グリゴーロは、シドニー・オペラハウスで演奏されるロッシーニの《スタバト・マーテル》のソリストとして出演する。シドニーの人々にとって、その時こそ、このような高い評価が妥当かどうかを判断する絶好の機会だ。期待は大きい。

昨日、元レーサーは少々落ち着かない感じだった。

グリゴーロはリハーサルの休憩時間にこう言った。「僕の声は、最前線で戦闘開始ってところだ。大きな公演の前は、競走馬と同じだ。突撃準備よし!」

グリゴーロはこれまでリッカルド・ムーティ、ダニエル・オーレン、ロリン・マゼールの指揮で歌ってきたが、ポップス界で、有名になり、成功し、富も築いた。2003年、この若いテノールは、著名なプロデューサー、サイモン・コーウェル創設による" イル・ディーヴォ"の結成メンバーの一人になったが、結局は、ポリドール・レコードとの数百万ドルの契約にサインして、" イル・ディーヴォ"には加わらなかった。

「始めからよくなかった。」 "イル・ディーヴォ"との決別についてグリゴーロはこう語った。「僕も彼らもハッピーではなかった。初対面のとき、サイモン・コーウェルは僕に、『やあ、困ってるよ。それで、僕とポップスの間にこの小さな"ギャップ君"を入れることに決めた』と言った」

グリゴーロは"イル・ディーヴォ"への参加を取りやめ、自ら「ポペラ"Popera"」と称しているアルバム"Hands of Love"を録音することにした。

「若者に僕の音楽を聴いてもらいたい。そして、『うん、いい音楽だ。この音楽が好きだ』と言ってもらいたい。そうなれば、もしかしたら、オペラに来て、ボエームとかいろいろなオペラを見てくれるかもしれない」とグリゴーロは語った。
******************************
サイモン・コーウェル Simon Cowell は、あの素人のポール・ポッツまで、世界的に売り出してしまったほどの辣腕プロデューサーです。"イル・ディーヴォ "との経緯は、インタビュー記事だけではわかりにくいので、ちょっと私なりに解説してみます。
ヴィットリオ・グリゴーロは、"イル・ディーヴォ"の創設メンバーとして、契約書にサインするところまで行っていたが、オペラにも出演することを条件として提示していて、サイモン・コーウェルも、条件をのむしかないと思っていた。しかし、グリゴーロは最初から、彼の横柄な(恐らく)態度が気に入らなかったこともあって、契約書にサインしなかった。サイモン・コーウェルは、イタリア人のオペラに対する特別な思いを全く理解してなかったんじゃないかな。なんでもお金で解決できると思ったんでしょう。ネット上では、グリゴーロが門前払いされた..という話もまかり通っているようですが、これもグリゴーロの経歴からして、この時点で、オペラを捨てることは考えられませんから、根拠のない思い込みでしょう。"イル・ディーヴォ"のメンバーにイタリア人がいないというのが象徴的な気がしますね。ソリストとして充分やっていけるのに、なにが悲しくて.....でしょ。

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コメント 8

rosina

グリゴーロ君があの4人組に門前払いされた?なんてのはあり得ないでしょう。

この間、彼の情熱的な"Il mio nome...."の映像を見ると、ジェルメッティのギター伴奏との息もぴったりですね。茶目っ気たっぷり(コンサートって事もあるでしょうが)、誇張たっぷりで。オペラの一部だけど、カンツォーネ的性格がある歌だから、却ってその方が聴いていて面白い!しリアルと感じました。声の陰影の付け具合もイタリア人特有の透明感ある声だからこそ。通俗的と感じる人もいるかもしれないけど、そう言えば、あのシラグーザもこの歌は茶目っ気たっぷりに歌ってたから、こういうのはイタリア人好き&上手そうです。大アリア無しで良いから、一度アルマヴィーヴァも歌って欲しい・・・^^;

by rosina (2008-07-04 19:09) 

keyaki

rosinaさん
4人組ファンとしては、そう思いたいという気持ちもわかります。しかし、けっこうな人気なんですね。私もいろいろ学びましたが、彼らのパターンは、まず順番にちょっとづつ歌って、最後に4重唱なんですね。4重唱も思いっきり声を張上げて歌う決まりなのか、ハーモニーとは無関係。グリゴーロに限らず、カウフマン(ビリャゾンはお呼びがかからないでしょうから)でも、あそこには溶け込めないですよ。元オペラ歌手をウリにしていますが、経歴は??です。それを、うまく使っているサイモン・コーウェルの手腕はすごいってことですね。

>彼の情熱的な"Il mio nome...."
いいって言う人と疲れるぅという人といるようです。でも、インタビューでもわかりますが、オーストラリアでは、ポップスでの人気が先行していて、色眼鏡で見られていることは確かですね。ポップス歌手がオペラを歌っていると勘違いしている人もいるようですし.....

アルマヴィーヴァは、2002年にフィレンツェで歌ってるんですよね。

by keyaki (2008-07-05 00:02) 

rosina

あのグループはオペラがほとんど知られてないアイルランドの一般スーパーマーケットのCDコーナーにもボッチェリ等とともにアルバムが並んでいます。マーケティングの勝利なんでしょうね。

>オーストラリアでは、ポップスでの人気が先行していて、色眼鏡で見られていることは確か

それはきっと日本でもそうですね。イタリアでは王子に次ぐ大人気、ジュネーヴではドンカルロのタイトルロールを歌い、ちょっと前には王子やシラグーザ等と同じ舞台(ランスへの旅)に立った事もあり、近々ではローマでアラーニャ、フィリアノーティのキャンセルで、Aキャストとしてアルフレードを歌って大好評だったグリゴーロ君の名前が、『グランドオペラ』の世界の名歌手2008に載って無いと言うのも不可解だけど、やっぱり日本のオペラ評論家の考えでは彼はポペラ歌手に分類されるからなのでしょうね。

>アルマヴィーヴァは、2002年にフィレンツェで歌ってるんですよね。

え〜っ、歌ってたんですね。音源とかはあるのでしょうか。
探してみようかしらん・・・



by rosina (2008-07-05 01:39) 

euridice

rosinaさん、こんにちは。横から失礼します。
>グリゴーロ君の名前が、『グランドオペラ』の世界の名歌手2008に載って無い
そうなんですか・・まあ、ありそうなことではあります・・

ペーター・ホフマンについてずっと見てきましたが、そういう傾向は否めないと思っています。
例えば1980年発行の「音楽の友」別冊『オペラのすべて』の歌手名一覧にホフマンの名前が載っていません。同世代の歌手では、ジークフリート・イェルザレムが載っています。理由はわかりません。当時、どう見てもホフマンのほうが活躍していたし、人気も高かったはずです。

1980 年にはまだポピュラー活動を全然していなかったと思うので、それが原因ではないはずですから、グリゴーロ君の場合と違うとも言えますが・・ もしかしたら、高校時代のバンド活動がばれてたかなぁ・・とか。この雑誌の座談会の論調が、ものすごく慎重なのも不思議です。1986年の同じ本には、さすがに名前が載せられましたが、略歴がかなりいい加減。クラシック評論家連中の単なる情報収集不足かもしれません。イェルザレムはオーケストラのバスーン奏者だったという経歴がクラシック畑の方々にアピールしやすかったのかもしれません。彼のデビューLPの惹句はなにしろ凄いですし・・

ホフマンに関しては2000年ごろにはあっという間に歌手名鑑などからは追放されちゃいました。まさか難病が理由だなんて口が裂けても言えない(言えるかな?)し、あり得ないと私は思うので、やはりポピュラー活動をやったのが原因だと思いますねぇ・・

参考記事です↓「オペラ歌手の品定め」の仕方
http://euridiceneeds.blog.so-net.ne.jp/2005-05-12-2

↓イェルザレムのデビューLPの惹句のことを書いた記事
http://euridiceneeds.blog.so-net.ne.jp/2008-05-08
by euridice (2008-07-05 08:44) 

rosina

euridiceさん、

こんにちは。ホフマンも相当酷い事を書かれていたのですね。以前の記事で『バスティアニーニは単に大声で朗々と歌うだけの一本調子な歌手』のような事が書いてあったので、かなりバイアスがかかっているなとは思っていました。

グリゴーロ君をオペラ歌手として意識し始めたのはかく言う私も最近で、それには、ローマ歌劇場の『椿姫』の成功のレビューをこちらのメディアで読んだ事、またkeyakiさんがブログを始められて、彼のオペラ歌手としての活躍を書いてくださるようになった事も大きかったと思います。それが、オペラ入門者なので、参考になるかと思い買っている雑誌だと言うのに、その雑誌で、こんなに有望な若いテノールの名前を目にしたのは、彼のポップスアルバムの宣伝記事だけ。本国イタリアでは大人気(オペラ愛好家及びポップスファンから)で、もう何度もオペラ公演で立派なオペラ歌手として歌える実力がある事を証明しているのに『無視』。さすがに変だと思います。

記事のリンク、どうもありがとうございます。早速拝読させて頂きますね。
by rosina (2008-07-05 11:22) 

keyaki

rosinaさん、euridiceさん
ここ何年も、情報は、ネットが頼りですので、日本の音楽雑誌は立ち読みすらしなくなりました。
彼のことは、日本語検索では、「ウェストサイド・ストーリー」のCDとイル・ディーヴォ関連でひっかかる程度です。
イタリアでは、すでにグランデテノールとして紹介されているんですね。芸術家に適用される兵役義務免除第一号、ミラノ・スカラ座デビュー最年少とか、いろいろありますが....日本で話題になったのかなぁ....なにしろ私の見方も近視眼的で、ライモンディを追っかけていて、共演者として浮上して来て、やっと、注目ということですので....大きなことは言えません。
ポップスとオペラ、両方ともいまのところ順調なようですが、こういう歌手は、ペーター・ホフマンだけですよね。
話題に事欠かなくて、楽しみが増えそうです。ライモンディも話題に事欠きませんけど、仕事をセーブしてきていますので、その代わりが見つかったってことかもしれません。

>>アルマヴィーヴァは、2002年にフィレンツェで歌ってるんですよね。
>え〜っ、歌ってたんですね。音源とかはあるのでしょうか。
無いみたいです。
この記事のガラコンは、放送されているので、いずれどこかから出て来るかもしれません。スタバト・マーテルの批評が、笑えるんで、聞いてみたいんですけど.....
by keyaki (2008-07-05 23:14) 

rosina

>ライモンディも話題に事欠きませんけど、仕事をセーブしてきていますので

そう言えば、来年ベルリンとウィーンでスカルピア歌いますよね、ライモンディ。どちらかを聴きに行きたいと思っている所なんです。

>イタリアでは、すでにグランデテノールとして紹介されているんですね。

やっぱりね。そうですよね。日本の批評家達の偏見ですよ。最も、彼らはイタリア人なんてバカにしていて、自分たちの方がよっぽど高尚だと思っているのかもしれないけれど。

>無いみたいです。
 ガーン(←死語)、そうなんですか〜〜。 でもこのセレナードを聴いて、『ワ〜〜っ、聞いてみたい』と言う気になったんですけどね。 王子のより十倍色気あるし(王子の歌唱は清涼剤的なところがあって、それはそれで良いけれど)・・・。

by rosina (2008-07-06 07:39) 

keyaki

rosinaさん
>来年ベルリンとウィーンでスカルピア歌いますよね、ライモンディ
両方ともカウフマンで、トスカが違うだけなんですよね。
ヨーロッパのライモンディファンの間では、Nadja Michaelのトスカはよくなかった....ということになってるようです。
カウフマンのカヴァラドッシは見た目もいいし、最高でしょうね。


by keyaki (2008-07-06 13:38) 

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