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Opera News 12月号 グリゴーロのCD評 ☆ “The Italian Tenor”がDiapason d'or 受賞 [CD/DVD/映画]

 メトロポリタン歌劇場のオペラ雑誌"Opera News"12月号に、ヴィットリオ・グリゴーロの"The Italian Tenor"のCD評が出ました!よ...と交流ブログのMadokakipさんが記事を送って下さいました。Madokakipさんが10月にご覧になったグリゴーロのロドルフォで感じたことが書かれているということで、日本語に訳してくださいました。仕事に劇場通いにとお忙しい中、本当にありがとうございます。

 すでにディスク評もいろいろ出ていてますが、私も納得同感のCD評です。このCD評でもパヴァロッティについて言及されていますが、先日のドイツのテレビ番組でグリゴーロ自身が、次のようにパヴァロッティの歌唱について語っているくだりがあります。
「ルチアーノの陽気さ、すがすがしさ、素朴さ。これらは僕の手本です.......イタリア的歌唱には常に同じやり方があります。そのスタイルや実際の演奏は違います。しかし、私達は、必ずしも模倣するということではなく、確かにルチアーノが歌ってきたように、自然に、純粋に歌うという点で共通しています」とグリゴーロは言う。とにかくルチアーノは彼の中にあふれている。

☆Opera News December 2010
Recordings:RECITAL
Vittorio Grigolo
□"The Italian Tenor" Arias by Donizetti,Puccini and Verdi. Coro e Orchestra del Teatro Regio di Prma, Morandi. Sony Classical 88697-75257-2


 若々しい男性的情熱、これこそイタリア・オペラの主役テノールにつきものの要素である。これらの役は、しばしば、純真かつ情熱的な愛や憧れに身を焦がしている若い男性という設定であるために、よほど叙情的に歌わなければ完全にその要素を表現することは出来ないほどだ。あの大噓つきのマントヴァ公ですら、そういう面がある。ジルダに言い寄りながら、純真な彼女への思いを語れば、そのあまりの説得力に、貧乏学生の振りすら成功してしまうのだから。ヴィットリオ・グリゴーロはこのようなレパートリーが上手い。マントヴァ公の"Parmi veder le lagrime"や、デ・グリューの"Donna non vidi mai"、そして、『ルイザ・ミラー』、『愛の妙薬』、『ファヴォリータ』、『ラ・ボエーム』、『トロヴァトーレ』からの有名アリアなど、これらはすべてこのソロ・アルバムに収められているが、グリゴーロのフレッシュで叙情性溢れるテノール声とストレートなアプローチが理想的な形でマッチしている。

 ボーイ・ソプラノ時代は"イル・パヴァロッティーノ"と呼ばれ、この盤からも、表現解釈の面で、傑出した先輩パヴァロッティとの類似性を感じる。歌唱のラインを前に出すために、非常にはっきりとイタリア語の子音を発音するといった、パヴァロッティの持っていた大きな美点を彼も見せているし、さらに重要な点は、彼のコミュニケーション能力、歌の後ろに魅力的な人間がいる、という感覚がある点が、若かりし頃のパヴァロッティを思わせるのだ。

 しかし、声の響きの話をするとパヴァロッティに似ているわけではない。グリゴーロの声は、少なくとも低音域では、もっと柔らかい手触りのあるトーンを持っていて、いわば鋼ではなく布を思わせるそれだ。ただし、音が上がっていくと、魅力的な、いわゆるsquilloとよばれるクオリティも姿を見せ始める。この盤で聴かれる、比較的柔らかく歌われている箇所については、箱の大きいオペラハウスでは同様の効果は得れないかもしれない。今シーズン、メトではロドルフォ役でデビューを果たしたグリゴーロだが、観客に、このディスクに入っているリッカルド、カヴァラドッシ、マンリーコといった役柄で楽しませてくれるまでには、十分な期間を置いてくれることを望もう。だが、それらの役柄においても、非常に繊細かつ思慮深く歌ってみせている点は喜ばしい。『仮面舞踏会』の三幕のアリアでは、大抵のテノールが、"Chiusa la tua memoria / Nell'intimo del cor"というフレーズを、二つにちょん切って歌ってしまう。前半部分の最後のAフラットを出した後、ブレスを入れて、同じ音程で歌われる後半の頭の音を思い切りアタックするのだ。しかし、グリゴーロはこれをワン・ブレスで歌い、はりつめた思いを保ちつつ、確かに、歌詞にある通り、"心の奥深く"に潜む思いを表現しているのである。

 また、彼のカバレッタも音楽として扱う、という断固とした姿勢が印象的で、このソロ・アルバムには、マントヴァ公の"Possente amor"や『海賊』第一幕のコラドのアリアのカバレッタも含まれている。いずれの場合も、リズムに対して非常に意識的であり、表現上のアクセントの箇所を微妙に変化させたりしているせいで、繰り返しまで歌っている点も無駄になっていない。"Di quella pira"では、きびきびとしたアーティキュレーションで音の変化を処理することにより、各フレーズの粒が立ち、旋律が前に向かって飛ぶ効果を生み出している。マンリーコは軍人であると同時に吟遊詩人である点を思い出せてくれるのだ。聴きなれたこの曲が、ありふれた単なる暴力的な声のデモンストレーションではなく、圧倒的な、音楽を伴った物語として迫ってくるのである。

 ピエール・ジョルジョ・モランディの指揮は、このソロ・アルバムを準備するにあたって用いられた細かい配慮の面で評価されるべきであろう。テンポは適切だし、彼の指揮はグリゴーロの表現解釈上の選択と寄り添い、一貫している。しかし、ソニー側の、聖人伝かと見まごうようなグリゴーロのバイオの犠牲にリブレットも訳もつけない、というパッケージングの仕方は、グリゴーロにとって損害と言っても良い。ソロ・アルバムにおける、こういったものの欠如は、非常に有名なアリアの場合に限って何とか許されるという程度のもので、注釈もなしに、どうやって『海賊』や『妖精ヴィッリ』からの曲のドラマ上のコンテクストを我々に理解しろというのか? そこにあるのは、聴き手が、彼の歌っている音楽よりも、グリゴーロという演奏家自身の方に興味があるに違いない、という勝手な思い込みではないだろうか? グリゴーロは、単なる人気上昇中のセレブではなく、これからの活躍が期待されているアーティスト=芸術家なのだから、もっとそれに見合ったやり方があろう。(Fred Cohn フレッド・コーン評)

☆“The Italian Tenor”がDiapason d'or 受賞
"Diapason" は、フランスのクラシック音楽関係の雑誌だそうですが、そこの恒例の賞Diapason d'or de l'année 2010 で、ヴィットリオ・グリゴーロのアルバム"The Italian Tenor"が新人賞とでも言うんでしょうか"NOUVEAU TALENT"を受賞しました。その他の賞を見てみますと、ヨナス・カウフマンが、リート部門(美しき水車小屋の娘)と年間アーティスト賞をダブル受賞してます。カウフマンは、水車小屋と"Verismo"と年間2枚もアルバムを発売してるんですね。

関連記事:グリゴーロの"The Italian Tenor" ディスク評と関連インタビュー
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mami

話題が遅れてしまいますが、
METデビュー素晴らしかったですね。それに、madokakipさんのその日のサイン入りプレイビルのお写真、実物がみれて嬉しいです。

keyakiさんのブログで、グリゴーロ君の存在をしり、またまたブログでのビデオなどで歌声などを聴いて、注目していました。CD発売やら、metデビューも、刻々といろいろと更新されてて、ワクワクしてその日をむかえました。私でさえそうなので、ずっと見ていらしたkeyakiさんは、さぞ嬉しかったでしょう!確かに、親戚の子を見守る、という気分になりますね、グリゴーロくん。

実は、先週、ヨーロッパに出張しておりました。初めてのスイス航空、チューリッヒ経由です。搭乗後、機内雑誌の映画をチェックすると、チューリッヒ駅の椿姫がある!!結局、行きに3回、帰りに2回みてしまいました。実は、全部を見るの、初めてだったんです!ず~~~っと見たいなあ、と思っていましたので、すっごく嬉しい!ほんと、これ名作ですね。メイも良いし。
知らなかったのですが、翌年には、公営団地でラ・ボエームってのもあったのですね。プログラムにあったので、見てみましたが、、、、つまらない。椿姫よりも、ぴったりのシチュエーションではあるのに。

ちなみに座席は、もちろんエコノミーですが、スイス航空は機体が新しいので、全席個人モニターあり、映画、音楽チャンネルも、1000ぐらい?の機体なので、オペラとクラッシックが別立てになっていて、結構な品揃えで、とても快適に過ごせました。

年明け、ベルリン、チューリッヒで公演なんですね。今、ベルリンとチューリッヒとのプロジェクトがあるのですが、出張要員、私じゃない!その頃寒いから、絶対いや~と思っていたのですが、大失敗しました!!


by mami (2010-11-21 15:18) 

keyaki

mamiさん
>チューリッヒ駅の椿姫
これは本当に予想もしてなかった吃驚イヴェントで、駅の雑踏の中なのに感動的で、なんとも不思議な椿姫ですよね。私も何度見ても飽きません。

>翌年には、公営団地でラ・ボエームってのもあったのですね
そうなんですよ。シチュエーションがピッタリということは、普通すぎるといことですし、見物人が少なくて淋しい感じもしましたし....ベルンの駅の雑踏の中でやったほうが、よかったのかも....

グリゴーロも「まずは、オペラでキャリアを築いて....」というドミンゴのアドヴァイスに従うことにしたようですし、ドミンゴも応援してくていますし、私も情報収集頑張らなくては!

mamiさんが、海外出張で、グリゴーロの公演にぶつかることを期待してます。
by keyaki (2010-11-22 00:47) 

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