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ヴィットリオ・グリゴーロの「言い過ぎ」事件(私は言い過ぎだとは思いませんが....) [インタビュー&記事]

gri_opera_chic.jpg 前記事の追記で紹介したルパート・クリスチャンセン Rupert Christiansenのインタビュー記事ですが、オペラチックさんのブログでも紹介されています。そこでは、一部なんでしょうがオペラファンのいやな面丸出しのなんか感じの悪いコメント続出.....しかし、この様なインタビューをまとめた記事で、グリゴーロのことを批判する心理もよくわかりませんし、コメントの中には、的を得てないイヤミとしか思えないものもあります.....
 英語の堪能な知人によれば、このルパート・クリスチャンセンの記事自体が、かなり揶揄っぽいので、そういうコメントが付くのも分るような気がする...ということです。ルパート・クリスチャンセンは、イギリスでは著名なジャーナリストだそうですが、私の偏見かもしれませんが、イギリス人男性はイタリア人男性に対して、妙な劣等感とか、憧れの裏返しの嫉妬のようなものがあるようなので、その辺の問題なのか...という気もしますがどうなんでしょう......
 ところで、どうやら、このイヤミなコメントをグリゴーロも見たようで、「謝罪と補足」のコメントがオペラチックさんのブログに掲載(このコメントはグリゴーロのホームページにも掲載されている)されました。私は、謝罪の必要はないと思いますけど......いつもの自信満々のグリゴーロでいいと思います。

 どんな内容の記事なのか......
ヴィットリオ・グリゴーロのインタビュー ~「マノン」を前に

 だれもがパヴァロッティの後継者であると心から誇らしく断言できるのは、ヴィットリオ・グリゴーロだ。ルパート・クリスチャンセンのインタビュー。

 パヴァロッティの後継者をさがすのはジャーナリズムの退屈きわまりない常套行為に思えるかもしれないが、だれもがこの肩書きにふさわしいと自信をもって吹聴できる者がいるとすれば、パヴァロッティ自身が彼を選んだからという理由も大きいが、それは33歳のヴィットリオ・グリゴーロであることは間違いない。
 グリゴーロは、システィーン礼拝堂聖歌隊のボーイソプラノだったとき、パヴァロッティがカヴァラドッシだった「トスカ」で羊飼いの少年役に選ばれた。公演の後、パヴァロッティは、賞賛して、グリゴーロのサイン帳に「ヴィットリオ 最高!」と書いた。グリゴーロはこのことを、自分こそ次のテノールチャンピオンだというパヴァロッティのご託宣であると思っている。
 グリゴーロは臆面もなくこのことを語る。イタリア人には珍しくもないことだが、彼は自分の長所と成功をためらうことなく綿々と語る。しかし、この大宣伝は、すばらしいユーモアを伴っているから、自ずと好感が持てる。
 ロンドン・オペラ・デビューのリハーサル半ばで、「今までで最高に素晴らしい経験です」と発表。際限のない野心といかにも切れ者といった感じの知性を振りまきながら、素晴らしい英語で力強く述べる。
 彼はコヴェントガーデンのやり方を評価している。ここでは全てがスムーズに進む。スカラ座とは違う。スカラ座は、常に陰でこそこそやっていて、実際に何が起こっているのかわからない。
 出演することになっている「マスネのマノン」新演出の演出家ローラン・ペリと指揮者のアントニオ・パッパーノに傾倒している。
 共演の、魅力あふれる、ロシア人ソプラノ、アンナ・ネトレプコは大好きだ。これまで出会ったことがなかった。「いつもにこにこしていて、いつも前向きです。仕事を楽しんでいます。僕たちの声はほんとによく合います」
 デ・グリュー役も好きだ。初めて歌うことになる。「この音楽はまさに僕にぴったりです。奴のこともよくわかります。あんな恋に落ちたら、善い女か悪い女かなんて問題じゃない。でも、彼はそういう気持ちが怖くなって、感情を抑えようとします。これを演じるのは面白いです」
 グリゴーロは熱血のイタリア物より優雅なフランス物に集中しようと思っている。オッフェンバックの「ホフマン物語」とグノーの「ファウスト」で大成功したばかりだし、グノーの「ロメオとジュリエット」とマスネの「ウェルテル」の予定もある。「多分5年以内に『カルメン』のホセをやります」
 この方向において、パヴァロッティではなくアルフレート・クラウスを手本にしている。良い兆候だ。クラウスは60歳代まで美しく歌い続けたのだから。だが、大衆市場に打って出て、ヴァレンタイン・デーのロマンチックなバラードのマイクを手にする世界の大スターになるという点ではパヴァロッティのようでもある。アルバム「In the Hands of Love」はポップチャートの第六位だし、アメリカとオーストラリアでは、人気タレントショウ「Dancing with the Stars」の人気者だ。ウェストサイド物語の有名な演出でトニーを歌ったイタリアでは、彼に夢中の女性たちでスタジアムをいっぱいにし、テレビでは自身の特別番組を持っている。
 彼が言うところの『クロスオーバー』ではなく『ポペラ』に関して、迷いはない。彼にとって、全てが音楽だ。「僕自身の時代の人々の音楽です」初めて両手でマイクを握ったとき「マイクと恋に落ちました」と白状する。「マイクで歌うのは善いとか悪いとかの問題ではありません。要するに別のテクニックです」
 しかし、現時点では、オペラハウスのほうに集中したい。来シーズンはニューヨークのメトロポリタン・オペラにデビューする。ソニーと契約した最初のアルバムの内容はヴェルディとプッチーニだけだ。ごく普通に歌う。馬鹿じゃないから、きちんとやりたい。
 要するに、ベニアミーノ・ジーリ同様、システィーナ礼拝堂聖歌隊出身なのだ。そこで四年間カリッシミやパレストリーナを歌って過ごし、「音楽を聴衆に示す方法」を学んだ。18歳のときその将来性が非常に大きかったからこそ、イタリアで徴兵免除第一号になったのだと、彼は説明する。「法廷で大いに争ったけど。今はサッカー選手もみんなやってます」
 セルジオ・レンディーネの新作オペラ《ロマンツァ》世界初演で病気のカレーラスの代役に立ったことは、「僕に必要だった自信を与えてくれました。あの後、僕はトップになれると確信しました」
 私生活では、ペルシャ生まれの美人妻と税金回避地のチューリヒに住み、特別あつらえのポルシェで「どんなスピードも出せる」のを堪能するのが最高の気晴らしだ。
 「危険すれすれが好き」と言う。とんでもない事故で一巻の終わりなんてことにならないことを望むばかりだ。

記事全文PDF:Vittorio Grigolo interview for Manon - Telegraph.pdf

 確かに最後の私生活云々の部分は、揶揄しているかんじです。それともイギリス特有のユーモアなんでしょうか......
 このインタビュー記事は、ネット上でいろいろなところに配信されています。面白いことにスペインでは、このインタビューを部分的に抜き出してEl tenor italiano Vittorio Grigolo defiende la "popopera"(ヴィットリオ・グリゴーロは”Popera"を擁護)と言う記事にしています。
 いろいろ言われるのも、オペラ界もポップ界もグリゴーロに注目しているということなんでしょう。

関連記事:
セルジオ・レンディーネ《ロマンツァ》世界初演(2002.11.21〜28)
13才のヴィットリオ・グリゴーロ"パヴァ ロッティーノ"の新聞記事
1990年ローマ歌劇場《トスカ》13才の グリゴーロ(羊飼いの少年):パヴァロッティ感激!
ヴィットリオ・グリゴーロが『徴兵義務免除第一号』になったいきさつ(2000.5.1)
[インタビュー&記 事]
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kametaro07

私も謝罪文を出す必要はないと思いましたが、記事が自分が意図したものと違った形で書かれ不本意だったのでしょう。
スカラに対して気を使ったということもあるかもしれません。
ROHではリハもうまくいっているので、ついスカラと比べてしまったのが、スカラの悪口を言ったと受け取られてしまうと今後の仕事がやりにくくなるでしょうし・・・。
>いろいろ言われるのも、オペラ界もポップ界もグリゴーロに注目しているということなんでしょう
その通りだと思います。
O.Cさんのところのコメントなど無視・・・とるにたらない虫です。
by kametaro07 (2010-06-11 21:45) 

euridice

人気故でしょう。
人気がある上に伝統から逸脱するものには風当たりが強いものなんでしょう。最近、玉三郎に関する本を読んだのですが、同様の状況があったとのこと興味深かったです。もう一つ、女性に人気がある者に対して素直になれない傾向が男たちにはあるとか。なるほど納得です。この本、なかなか面白いです。幻冬舎新書 中川右介著「坂東玉三郎〜歌舞伎座立女形への道」

ついでにホフマンの伝記1983年からインタビューについての発言をざっとまとめて、TBします。
by euridice (2010-06-11 21:54) 

keyaki

kametaro07さん
グリゴーロは、自分のことを喋っているだけで、誰のことも中傷していないのに、ああいう反発をくらうって、ちょっと吃驚です.....どういう人たちなのかそっちのほうに興味がわきます。たとえば、パヴァロッティの後継者はフローレスじゃないのか...とか、イタリアで歌っているのは、アルミリアートくらいだ....とか,スカラ座の件もかなりずれてますよ。

グリゴーロは子供の頃、パヴァロッティに「ヴィットリオ最高だったよ」と抱きしめられて、オペラ歌手になりたいな...と思ったと話しているだけだし、グリゴーロだって最近フェニーチェとバーリで歌っているし....グリゴーロが別のインタビューで、デビュー当時は、仕事がなくて外国に行くしかなかった....と語ってているように、公演自体が少ないイタリア国内の劇場で頻繁に歌うのは無理でしょう。ファビオ・アルミリアートだって国内より外国の公演の方が多いですよ。
スカラ座の件は、劇場側の対応にいろいろ問題があるのは、マルセロ・アルバレスの一件でも明らかなのに、ずれたことを言ってますよね。

こうなってくると、マルセロ・アルバレスが「オペラ・ブロガーは、百害あって一利無し....オペラ界の癌だ....」と言っているのもそうかもしれない...と思います。オペラチックさんは良識のある方のようですが、グリゴーロのファンだということを公言しているので、アンチが湧いて出て来たのかもしれません。
by keyaki (2010-06-12 10:37) 

keyaki

euridiceさん
何年経っても変わってないんですね。TBありがとうございます。
グリゴーロも、40くらいになれば、ホフマンの境地になるのかも....

>「特にこういう仕事においては多くの事を自分一人の胸におさめておく必要があります。例えば、素晴らしい経験の数々。......」

>「インタビューでどの程度踏み込んでもよいか、どういうことは絶対言わないほうがいいのか、どこで譲歩することができるのか、未だによくわからない。話したことは、まず間違って解釈されるという前提から出発しなければならない」

ホフマンもその人気故さんざんやられたくちですものね。

今回のインタビュー記事は、イギリス的味付けが多過ぎたんでしょう。インタビューのやり取りをそのまま載せる形式の記事であれば、ぜんぜん印象が違ったのではないかと思います。
by keyaki (2010-06-12 10:51) 

ペーターのファンです。

このジャーナリストさんは、本人が普通に話したことに趣の異なる味付けを施して記事を書いたように読み取れます。中身は嘘ではないとして、言葉の表現で違う印象を与えていますよね。ホフマンもイヤというほど・・・。

私もeuridiceさんが言及していらっしゃる本を読みましたが、中に非常に印象の強い言葉がありました。ある人物の発言について語った部分ですが、上の記事を読んだ瞬間に同じ方法だと思いました。
「嘘ではないというレトリックを駆使して歴史を書き換えていくので、その発言や書かれたことは注意して読まなければならない」

ただし、本の中でこの言葉を向けられているのは舞台に立つ側の人間ですが、多くのインタビュー記事などは報道する側の人間がこの手法を用いていることが問題なわけで、鵜呑み丸のみは危険だと読む側が心得ておくほかないのでしょう。

人気があればアンチも多いのは仕方ないですし、グリゴーロのファンは彼を理解しているでしょうから、やっかみはやり過ごすに限ります。
by ペーターのファンです。 (2010-06-12 15:05) 

keyaki

ペーターのファンさん
数時間のインタビューをして、質問、回答形式ではなく、こういう記事にした場合は、筆者のさじ加減ひとつでどうにでもなるんですよね。

>鵜呑み丸のみは危険だと読む側が心得ておくほかないのでしょう
そうですよね。
そういうことも分からないで、的外れなコメントばかりで、あきれます。

まあ、変なコメントがついたお蔭で、グリゴーロが出て来て、謝罪といいながらも、また自分の言いたいことを言ってますから、よしとしましょう。こういうことがあると、用心していろいろ話してくれなくなるとつまらなくなりますね。今後は対談形式の記事にして欲しいです。
by keyaki (2010-06-13 02:12) 

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