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コッラード(ホセ・クーラ)・ハイライトVideoClip&ちょっとあらすじ [ヴェルディIl Corsaro 海賊]

 ヴェルディの《海賊 IL CORSARO》は、めったに上演されないオペラとして有名です。ちなみになんでも歌っているドミンゴも歌ってないということは、そのマイナー度が半端じゃないということに他なりません。
 ところで、もう一つベッリーニ作曲の《海賊 IL PIRATA》があります。日本語だと同じに「海賊」になってしまいますが、イタリア語では"pirata"と"corsaro"と二種類の「海賊」がいるということです。違いは、"pirata"が普通の「海賊」で、"corsaro"は大義名分を持った、つまりバックに国家とかがついている公認の「海賊」なんだそうです。
 私も今まで聞いたことがなかったので、これをチャンスに聞いてみましたが、こりゃやっぱり面白くないからマイナーなんだ...とは思いませんでした。話しとしてもオペラチックで面白いし、音楽もまさにヴェルディ!なんです。音楽は《ロンバルディ》と非常に良く似ていて、そっくりな部分も数カ所あります。美しい重唱、アリア満載で、私はとても気に入りました。《ロンバルディ》のように話しも複雑じゃないのもいいと思いますし.....なぜマイナーなのか分かりませんが、考えられる理由を思いつくまま列記してみます。

1.やっつけ仕事だったと言われている
2.そのせいか1時間半と短く興行的に中途半端
3.同程度のソプラノが二人必要
4.エキストラ(殺陣のできる人も)が多数必要
5.主役のコッラードとメドーラの素性が謎


 ヴィットリオ・グリゴーロは、5月末の雑誌のインタビューで、『チューリヒで、はじめて《Il Corsaro 海賊》をやるのを、もの凄く楽しみにしています。これがうまくいったら、一生海賊だけやってもいいです。』と語っているようにコッラード役が気に入ったようです。ソプラノが二人も出ますが、確かにテノールがソプラノの添え物ではなく、かっこいい役なんです。
 最近ですと有名どころではホセ・クーラがレパートリーにしていて1997年にトリノで、2005年にはバルセロナのリセウ大劇場で演奏会形式で歌っています。2004年パルマの公演がDVDになっていますが、ブルゾンが出ているとは言え、特に主役のテノールが洗練されてなくてちょっとどさ回りっぽい雰囲気になっちゃっているのが残念です。

2005年バルセロナの公演(演奏会形式)の録画から、コッラード(ホセ・クーラ)が歌う場面をYouTubeにアップしました。日本語字幕も付けましたので、ハイライト版ですが、だいたい内容が把握できるとおもいます。一応、あらすじもざっと紹介します。
Verdi - IL CORSARO 再生リスト

◎プレリュード 幕が開く 海賊たちの島
Verdi - Il Corsaro(1/7) - Atto1 -Tutto parea sorridere - Si, de' corsari il fulmine
海賊たちの勇ましい合唱に続きコッラードが、昔は希望に溢れなにもかも輝いていた....と美しいアリアを歌う。そこに部下のジョヴァンニが偵察艦からの密書(トルコの太守パシャ・セイドが海賊退治に出陣するという情報)を持ってくる。奇襲攻撃で宿敵をやっつけるチャンス到来とすぐに出港の準備をするように命じる。「武器をとれ 私が指揮をとる」と海賊たちを鼓舞する

Verdi - Il Corsaro(2/7) - Atto1 -"È pur tristo, o Medora, il canto tuo"
◎メドーラの居室
メドーラは、コッラードが訪れるのを待っている。ハープの調べにのせてコッラードへの想いを歌う。「眠れない 死にたい 私が死んだらコッラードは涙を流してくれるはず...」今風に言えば完璧うつ状態。そこにコッラードがやって来て、戦いに行くことを告げる。メドーラは、「もう二度と会えない気がするから行かないで...」と懇願する。「すぐに戻る」と慰めるが「あなたが戻る前に私は死んでしまうでしょう...」と泣き崩れる。コッラードは後ろ髪をひかれる思いで去っていくのでした。
※メドーラのアリア"Egli non riede ancora!"

◎2幕:トルコ太守パシャ・セイドの宮殿の中のハーレム
ハーレムの妻妾たちは、グルナーラがパシャ・セイドの一番のお気に入り....と歌う。グルナーラは、「私は、この世で一番不幸な女...セイドは私を愛しているが、私は憎んでいる....宝石や金で私の愛は得られない...私の想いは 懐かしの故郷の空へと飛び立つ...」と歌う。

◎コルサーロ退治出陣前の宴会
セイドは海賊との戦いを前に気勢をあげ、アラーの神に勝利を祈願する。

◎コッラードの策略→宮殿焼き討ち→戦い→コッラード捕まる
Verdi - Il Corsaro(3/7) - Atto2 -"Onde, o Dervis?" - "Dei perfidi fuggii pur or l'artiglio
海賊の捕虜だったという男が連れて来られる。そのエルヴィスと名乗る男はコッラードその人で策略だったのだが、セイドは彼からコッラード率いるコルサーロの情報を聞き出そうとする。そうこうするうちに火が放たれコルサーロたちがなだれ込んでくる。セイドは謀られたと気づくが時すでに遅し。コルサーロたちの勝利は目前だった。そこにハーレムから女たちの悲鳴が聞こえる。コッラードは、女たちを助けに行くが、そのせいで劣勢となりセイドに捕らえられる。グルナーラは、コッラードに心惹かれる。

Verdi - Il Corsaro(4/7) - Atto2 -"Signor, trafitti giaciono gran parte di costoro,"
セイドは勝利し、コルサーロたちも多数が死ぬが一部は逃げる。グルナーラとハーレムの女たちはセイドに慈悲の心をとコッラードの命請いをす。

◎3幕:セイドの居室
セイドは、グルナーラがコッラードの命請いをしたことに嫉妬しその態度に疑いを抱く。グルナーラを愛しているが、もし裏切られたらあの女を灰にしてやる....と心に誓う。そして、グルナーラの本心を確かめるために「明日はコッラードの処刑だ...」とグルナーラの反応を見る。グルナーラは「せめて命だけは、なにか役に立つかもしれない....」とコッラードを助けようとする。セイドは「お前はあいつを愛しているのだな....その顔に書いてある お前もコルサーロ同様に恐ろしい運命が待っているぞ...」と脅す。

Verdi - Il Corsaro(5/7) - Atto3 -"Eccomi prigioniero! Ambiziosi miei sogni svaniste!"
◎コッラードは鎖に繋がれている
「自分が死んだらメドーラは生きてはいないだろう... 」と囚人となった運命を嘆き眠りに落ちる。そこへグルナーラがやってくる。コッラードに短剣を渡し、足かせと鎖をはずし、セイドを殺して一緒に逃げようと頼む。コッラードは、ここで死ぬのは自分の運命だ...寝首をかくような卑怯なことはできないとグルナーラの願いを拒絶する。グルナーラは、「私が短剣の使い方を教えてあげるわ!」と立ち去る。

◎嵐が吹き荒れ稲妻が光る
Verdi - Il Corsaro(6/7) - Atto3 -"Sul mio capo disecenda, fero Iddio..."
コッラードは、不運を呪い、雷に打たれて死ぬことを望む。
嵐が静まりグルナーラが放心状態で戻って来て、セイドは死んだ...と告げる。コッラードは、自分のために人殺しまでしたグルナーラを助けるために一緒に海に逃げる。

◎海賊の島
メドーラはコッラードが死んだと思い込み絶望している。
Verdi - Il Corsaro(7/7) - Atto3 -"Oh gioia! è lui!... Corrado, egli è Corrado!..."
近づいてくる船が....コルサーロたちは喜びの声をあげる。コッラードにかけよるメドーラ.....側にいるグルナーラに気づき「あの人は誰?」と尋ねる。コッラードは、命を助けられたことを話して聞かせる。メドーラは、コッラードが死んだと思って、毒薬を飲んだことを告げ、息を引き取る。
コッラードは、メドーラが死んだ!私も生きていられない!....と海に飛び込む。幕

メドーラが死んで行くところの重唱も《ロンバルディ》のオロンテが死んで行くところだったかな....にそっくり。ロンバルディもマイナーですが、バスが主役っぽいのでルッジェーロ・ライモンディが若い頃からレパートリーにしていますので、私には馴染みのあるオペラなんです。どの部分がそっくりかピックアップするのも面白いかも.....

ヴェルディ:海賊 IL CORSARO
2005-02-06
Gran Teatre del Liceu, Barcelona
conductor:Marco Guidarini

ソリスト:
Corrado:José Cura
Medora:Marina Meschervakova
Gulnara:Susan Neves
Seid:Carlo Guelfi
Giovanni:Josep Ribot
Selimo:José Manuel Zapata
Orquestra Simfònica i Cor del Gran Teatre del Liceu

※"Tutto parea sorridere"の部分がGran Teatre del Liceuのチャンネルにアップされています。画質がいいです。
※右のクーラの写真は、1996年トリノの《海賊》だと思いますコッラード。フリットリ、ドラゴーニ、フロンターリという豪華キャスト(キャスト詳細は右の写真をクリック)。クーラは同年6月18日にROHでもIL CORSARO(演奏会形式)を歌っている。Evelino Pidò 指揮/José Cura,Viktoria Loukianets,Maria Dragoni,Roberto Servile

メモ:ジュセッペ・ヴェルディ(1813.10.10. - 1901.1.27)作品初演年代順(1839〜1893)
初期:1.オベルト/2.一日だけの王様/3.ナブッコ/4.イ・ロンバルディ/5.イェルサレム/6.エルナーニ/7.二人のフォスカリ/8. ジョヴァンナ・ダルコ/9.アルツィーラ/10.アッティラ/11.マクベス/12.群盗 I Masnadieri/ 13.海賊(IL CORSARO)/14.レニャーノの戦い/15.ルイザ・ミラー/16.スティッフェーリオ
中期:17.アロルド/18.リゴレット/19.イル・トロヴァトーレ/20.椿姫/21.シチリアの晩鐘/22.シモン・ボッカネグラ/23.仮面舞踏会/ 24.運命の力/25.ドン・カルロ
後期:26.アイーダ/(Requiem)/27.オテロ/ 28.ファルスタッフ

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コメント 6

りょー

keyakiさん、力作の特集をありがとうございます!
pirataとcorsaroにそんな違いがあるとは知りませんでした。納得!

>どの部分がそっくりかピックアップするのも面白いかも.....

わ、面白そうです。是非お願いします。

>※右のクーラの写真は、多分1996年トリノの《海賊》だと思います。フリットリ、ドラゴーニ、フロンターリという豪華キャスト。

はい、間違いありません。
http://74.93.228.156/Operas/Corsaro/corsaro_photos.htm
Kiraちゃんちのこのページ↑に他の写真も載っています。
それで言われて初めて気付きました。たしかに、この写真のメドーラはフリットリちゃんですね!知らなかった~!あのアバドのオテロの一年前に海賊で共演してたんですね。
同じ年のロンドンの公演(これもクーラとドラゴーニで、指揮はピドです。メドーラはルキアネッツ。)はラジオ放送の録音が残っています。
by りょー (2009-12-04 21:02) 

Sardanapalus

なるほど、pirataとcorsasoの違い面白いですね。特に大航海時代は政府公認の海賊がいっぱいいましたから違う単語が使われたのでしょうね。でも、例えば英語ではそういう区分けはないですから、このあたりを掘り下げていくといろいろ面白い発見がありそうです。(歴史オタク話ですみません^_^;)

>2.そのせいか1時間半と短く興行的に中途半端
>3.同程度のソプラノが二人必要
>4.エキストラ(殺陣のできる人も)が多数必要
上演時間が短いのにお金がかかるということですね?多分、そこがネックなのでしょう。
by Sardanapalus (2009-12-04 23:53) 

hasida

ヴェルディの28作品全部の動画を手に入れて見た中でも「海賊」は、パルマのDVDを見た限りでは「ジャヴァンナ・ダルコ」「アルツィーラ」「レニャーノの戦い」と並んで特に冴えない部類と思ってました。仰るとおり、テノールが洗練されてなくて「最初から最後まで額に皺寄せて愚痴ばかり言いながらグズグズしている」ようにしか見えませんでした。
グリゴーロが一生コッラード役だけでもいい、と言うくらいですから、これとは全くの別物の「海賊」なのでしょうね。見てみたいです。
by hasida (2009-12-05 09:55) 

keyaki

りょーさん
クーラがレパートリーにしていてよかったです。本当に情報が少ないんですよ。いろいろ教えて頂いて助かりました。あと有名テノールではカレーラスが歌っているくらいじゃないかと思います。

by keyaki (2009-12-05 10:54) 

keyaki

Sardanapalusさん
>英語ではそういう区分けはない
英国=海賊公認というイメージですけど、キャプテン・ドレイクとかはコルサーロでしょうね。日本でも、村上水軍とかもともと海賊だし....
国家というよりは宗教なのかも....回教徒の船を襲うのは自動的に公認ということだったのかもしれませんね。

>上演時間が短いのにお金がかかるということですね?
上演時間が短いと舞台に経費がかかってもチケット代に反映できない....ので、コストパフォーマンスが悪いってことですよね。
今回のチューリヒも、写真で見るだけでもすごい舞台ですから経費はすごくかかっていると思いますが、チューリヒのやり方は、ニュープロダクションは、公演数で元をとっているようですね。評判が良くないとダメですけど、今回のIL CORSAROは客の入りも上々のようですから興行的にも大成功ということでしょうね。
by keyaki (2009-12-05 11:19) 

keyaki

hasidaさん
「一日だけの王様」が大好きなhasidaにも認めてもらえないとは.....(笑

>テノールが洗練されてなくて「最初から最後まで額に皺寄せて愚痴ばかり言いながらグズグズしている」ようにしか見えませんでした
見た目は置いておくとしても、つまりコッラードの素性が謎で、性格的に掘り下げられないので、演じる側もどうしていいか分からない...ということもあるかも知れませんね。

>グリゴーロが一生コッラード役だけでもいい
これは、どんな演出になるのかも分からない時期の発言なので、.チャンバラ大好き!みたいなもので、単に英雄的な海賊が好き!というだけかも...でも、音楽的にも魅力があるってことだと思いますけど。それと宣伝の意味もあったのかも....お客さんが来てくれないことには話しになりませんからね。
by keyaki (2009-12-05 11:32) 

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