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オペラ歌手のトニー...ホセ・カレーラスとヴィットリオ・グリゴーロ... オペラ歌手とミュージカル ["West side story"スカラ座/CD]

 ネットを散策していて、ヴィットリオ・グリゴーロのことをミュージカル歌手と決めつけている人たちがいるのにちょっと吃驚。グリゴーロが、ミュージカルといえるものに出演したのは、2003年ミラノ・スカラ座の《ウェストサイド物語》だけです。なのになぜでしょう....本人もインタビューの度に、「僕のキャリアは、オペラだけ....」と言っているのに。多分、オペラ関係のCDがリリースされていないからでしょうね。"Pop Opera's"のアルバム"In The Hands of Love" と "West Side Story 2007"だけですから。

 

 ところで、"有名"オペラ歌手のトニーといえば、ホセ・カレーラス、もちろん録音だけですが、作曲者のバーンスタインが全曲録音を行ったことでも価値のある録音です。その時のレコーディングのメイキングがとても面白いんです。カレーラスは英語に四苦八苦、バーンスタインはスタッフに八つ当たりするし......ミュージカルナンバーはほとんどのオペラ歌手が歌っていますが、全曲となると難しい面がいろいろあるようです。

 『スペイン語を母国語とする僕がニューヨークっ子を演じる...これはむずかしいよ、性格や雰囲気を出すのがね....むずかしいのはアクセントだけじゃなくて音楽そのものもね....たとえば最初の曲"Somthing Caming"だが言葉が多いのに音楽のテンポが早い...あれが一番むずかしかったかな....』とカレーラスが語っています。(左上の写真をクリックするとビデオクリップにリンクしています)
 1984年ですから、カレーラスは38才でオペラ歌手としてすでに超売れっ子でしたから、ちょっとミュージカルに挑戦してもなんの批判もされないし、しかもバーンスタイン自身の指揮でしたし。

 グリゴーロの場合は、ミラノ・スカラ座の《ウェストサイド物語》に出演したのは、2003年26才の時です。19才からオペラ歌手として舞台に立ち、その当時は《愛の妙薬》のネモリーノを歌って評価されていましたし、有望な若手テノールとして多いに期待されてもいましたが、まだまだこれからという時でした。この《ウェストサイド物語》をきっかけに、ポップスにも足を踏み入れることになり、それが大成功してしまったので、オペラ歌手としての評価がどこかにすっ飛んでしまったんでしょうね。しかし、2007年からローマの《椿姫》、ワシントン・ナショナルオペラの《ボエーム》、ミラノ・スカラ座の《ジャンニ・スキッキ》、ジュネーヴ大劇場の《ドン・カルロ》、チューリヒの《椿姫》《ルチア》、ワシントン・ナショナルオペラの《ルクレツィア・ボルジア》、バレンシアの《ファウスト》.....とどれも好評で、話題にもなりましたが、それでもミュージカルだのクロスオーバーだのと言われるということは、所詮、生舞台での成功は、それほど普遍的効果は無いということなのでしょうか。

 オペラ歌手が、皆、ミュージカルを歌える素質があるとは限らないようで、グリゴーロのことを「ミュージカルも歌えるオペラ歌手」とか「オペラ歌手なのにミュージカルも歌える」...と紹介している記事もありました。エツィオ.ピンツァは、両方で成功したバス歌手ですが、チェーザレ・シェピは、ミュージカルで有名になるのが夢だったそうですけど、うまくいかなかったようですし、ルッジェーロ.ライモンディもブロードウェイに誘われたが断ったとか....いろいろあるようです。

 右上の写真をクリックすると《ウェストサイド物語》のグリゴーロのトニーの歌「サムシング・カミング」と「ワン・ハンド、ワン・ハート」にリンクしています。このCDのマリアは、ピュア・ヴォイスが売りの人気の歌姫ヘイリー・ウェステンラ Hayley Westenra(1987.4.10- )ですが、単調で物足りない.....。この《ウェストサイド物語》ブロードウェイ初演50周年記念アルバムの紹介文に、「クラシカル・クロスオーバーのスター」と書かれていますが、「オペラ歌手」と書いて欲しいですね。

 グリゴーロは、2011年にミラノ・スカラ座で《ロメオとジュリエット》に出演予定ですが、《ウェストサイド物語》は、現代ニューヨーク版のロメオとジュリエットですから、それを意図した出演依頼なのかしら......

☆ホセ・カレーラス José Carreras 1946.12.05ーバルセロナ

関連記事:《ウェスト・サイド・ストーリー》トニー:ミラノ・スカラ座2003
カトリックのテレビ番組にゲスト出演 

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コメント 4

Sardanapalus

グリゴーロは、オペラ歌手というイメージとは程遠い容姿をしているので、ミュージカル俳優だと思い込んでいる人がいるのでしょう(^^)イタリアにそんな職業があるのか私は知りませんが。

>所詮、生舞台での成功は、それほど普遍的効果は無い
これ、俳優でも歌手でも言えることですよね。舞台でどれだけ活躍していても、テレビやCD、DVDに登場しないとほとんど無名とか。仕方のないことだとは思いますが、その宣伝効果がないからこそいつまでもその素晴らしい才能を生の舞台で楽しめるということかな(チケットが手に入る)、とも思います。
by Sardanapalus (2009-08-09 19:38) 

keyaki

Sardanapalusさん
グリゴーロは、今後は、オペラに専念するようですから、ポップ歌手だのミュージカル歌手だのとは言われなくなると思いますけど、彼のPoperaのCDを聞いてファンになった人たちは、がっかりみたいです。2枚目のアルバムも未だに音沙汰無しですし。
彼のことをミュージカル歌手だろ...と言っている人たちは、彼のオペラを聞かないで言ってるようです。確かに彼のポップのCDを聞くと、とてもオペラ歌手とは思えない歌い方をしてますから、これでオペラが歌えんのかよ....ってことなんでしょうね。所謂クロスオーバー歌手が、必死でオペラチックに歌うのとは正反対ですからね。

by keyaki (2009-08-10 15:51) 

euridice

TB、承認&TB記事へのTB、ありがとうございます。

ミュージカルファンにとっては、素晴らしいミュージカルを提供してくれる歌手はミュージカル歌手でしょう。素敵なオペラをやってくれる歌手はオペラ歌手。ポップスファンにとっては魅力的な曲を聴かせてくれればポップス歌手。

たとえばカレーラスはウェストサイドの全曲録音をしても、あくまでもオペラ歌手がミュージカルを歌ったにすぎない。もしグリゴーロのウェストサイドがそうだったら、だれもミュージカル歌手とは言わないし思わないでしょう。グリゴーロのウェストサイドはオペラ歌手のミュージカルではないということ。

ホフマンで言えば、彼がオペラ歌手だということを知らないポップスファンもいたそうですし、逆もまたいたわけです。そして、自分の感性ではなく、各自勝手な先入観で判断する情報通というか教条主義者が存在するのも事実だと思います。

例えばカラヤン指揮のパルジファルの録音にロックの影響が見られるとか、バイロイトのローエングリンはロック歌手っぽいとか・・ ホフマンのオペラ座の怪人は正しく歌っているが、やっぱりオペラ歌手だからつまらないとか・・ 自分の好みでないのは自由ですけど、そこに、オペラ歌手だからとか、ポップスをやっているからというのがつくというのはそういうことです。自分が気にいらない理由を求めた結果かもしれませんけど、嫌いな理由なんて無意味だと思います。逆に例えばオペラ一筋の歌手が好きなのは勝手ですけど、だから、その声や歌が好きなんて変じゃない?
by euridice (2009-08-10 21:41) 

keyaki

euridiceさん
人間誰しも先入観に左右されるのは仕方がないですね。
カウフマンは、CD屋の宣伝効果で最高のテノールという先入観を持っている人が多いようですよ....ビリャソンもね。
by keyaki (2009-08-14 20:29) 

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