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ジュネーヴ大劇場《ドン・カルロ》:グリゴーロ無しの初日レビュー [ドン・カルロ]

  定期購読しているオペラ雑誌(l'opera)の10月号がやっと届きました。数年前からスイスの代理店を通して定期購読していましたので、早くて安かったのですが、うまく継続更新できなかったので、日本の代理店に替えたのですが、遅くて高い(確実性が取り得).... ということで、今頃10月号なんです。
 そして、今月号にやっとジュネーヴ大劇場の《ドン・カルロ》のレビューが掲載されました。この雑誌は、レビューが早いのが特徴ですが、イタリアらしく月刊誌にも夏休みがあるので、遅くなったようです。しかも、やっぱりそうか.....なんですが、グリゴーロが出演した日のレビューではありませんでした。基本的に、初日のレビューを掲載するのが原則のようです。ヴィットリオ・グリゴーロは喉頭炎のため、初日の6月16日と19日の公演は、キャンセルで、22,24,26,28日は、回復して出演したんですけど。ということで、ドン・カルロは、代役のマリオ・マラニーニ(1958.6.12 イタリア)についてのレビューとなっています。

前置きが長くなりましたが、全体的に、演出も音楽も非常に素晴らしいもので、歌手にもあながなかった....というレビューでした。代役のマリオ・マラニーニは、年齢的にはいくらなんでも18才のドン・カルロには見えませんが、スカラ座の「無益な用心」としか考えられないドタバタ劇で第2キャストから突如第一キャストになっちゃったスチュアート・ニールとは大違い、体型は、グリゴーロと同様スマートです。急な代役なので、衣裳が合うということも考慮に入れて捜したのでしょうか。しかも歌も良かったようです。このプロダクションも他のキャストも好評です。

『ジュネーヴ大劇場の2007/2008シーズンは、ヴェルディの《ドン・カルロ》(1884年1月10日、イタリア語4幕ミラノ・スカラ座バージョン)で、幕を下ろした。オリジナルは、フランスの二人組 パトリス・コリエ&モーシェ・ライザー(Patrice Caurier と Moshe Leiser )演出による新制作で、指揮はロベルト・リッツィ・ブリニョーリ..........タイトル・ロールの直前の代役にもかかわらず、全てのキャストは、声的にも最高だった。
ドン・カルロ役で、本当に期待されていたヴィットリオ・グリゴーロは、突然の健康上の理由(咽頭炎)で、マリオ・マラニーニ(1958.6.12 -イタリア)が代役に立った。彼は、明瞭な響きと同様に美しいディクションで、声楽的観点からも満足のいくものだった。
若いブルガリア出身のバス、オルリン・アナスタソフの偉大な権力者フィリッポは、完璧で声楽的にも最高に安定していた。
スコットランド人のバリトン、アンソニー・マイケルズ=ムーアは、ポーザ侯爵として、威厳もあり、ぴったりな声域であるが、声楽的観点からよりも演劇的観点から更に納得させるものだった。
カナダ出身のソプラノ、ミッシェル・カパルボは、強烈なエリザベッタで、彼女の心の奥と気難しさを演劇的に完璧に具体化した。非常に計算されたピアニッシモと音色のニュアンスは、上品さと精神的なもろさを誇示した。
フランス出身のシルヴィー・ブルネットは威厳のある完璧なエボリだった。
若くて前途有望なブルガリアのソプラノ、テオドラ・ゲオルギューは、とびきり上等のテバルドだった。
アイスランド出身のクリスティン・ジグムンドソン は、尊大で恐ろしい大審問官にピッタリだった。.....Ching-Lien Wu 指導の下、合唱団は素晴らしく力強く情熱的で、いつものことだがイタリア語のディクションも最高で、納得させられるものだった。....
若い指揮者、ロベルト・リッツィ・ブリニョーリは、いつもすべてのセクションで柔軟かつ華麗なスイス・ロマンドオーケストラの最高の能力を引き出し、ヴェルディ的暗くくすんだ音色を再構築した。歌手に対しても最高のサービスをしたが、決して、支配権を弱めるものではなかったし、同様にテンポを完璧に持続し、オーケストラと舞台のバランスをとることは容易ではないことを心得ていた。.......このヴェルディの傑作《ドン・カルロ》は、全公演売り切れ状態だった。』l'operaから

こんな感じのレビューですが、演出、演奏、歌手、三拍子揃って素晴らしい公演だったようです。グリゴーロが出演していれば、きっと他のレビュー同様更に絶賛されていたと思うと、プレミエのキャンセルは本当に残念です。
★キャスト詳細→Grand Théâtre de Genève

関連記事:ジュネーヴ大劇場《ドン・カルロ》

余談:オペラのレビューについて
オペラのレビューは、初日を観て書くのが、原則ということになっているそうです。従って、この《ドン・カルロ》もグリゴーロのシングルキャストにもかかわらず、雑誌では、初日のレビューが掲載されました。こういう経験は前にもあるんです。ルッジェーロ・ライモンディのシングルキャストでボローニャ歌劇場、新演出の《ドン・パスクアーレ》が上演されましたが、ライモンディは、最初の2公演をインフルエンザで歌えなくなり、ボローニャ出身で親友でもあるブルーノ・プラティコに代役を頼んだんですが、その時のレビューが、ライモンディのための公演だったにもかかわらず、やっぱり初日のものでした。
しかし、初日じゃないのもあるんですね。たまたま、ここ界隈で話題のロシア人バス歌手ヴィノグラドフがタイトル・ロールだというので注目してたのですが、なぜか、彼が出演しなかった最終公演のレビューが掲載されました。シェーファーがロッシーニ!というので話題になったベルリン国立歌劇場《イタリアのトルコ人》 (2008.6.22〜30 )です。若い歌手で初役、しかもタイトルロールなので、不調でも役に合わなくても、なんらかのコメントを書かないわけにはいかないが、さりとて、若い歌手をばっさり切って捨てるわけにもいかず、最終日の公演のレビューになったのか....と思ったり。というのも、普通は、はっきり「健康上の理由」で、とか「インフルエンザ」で、とか書きますが、「不調」というような言葉が使ってある上、「最初の歌手」と書いてヴィノグラドフの名前も書いてないんです。他のレビューでもほとんど触れられていませんし、書いてあっても、よくない...と一言コメントでしたから、ヴィノグラドフには歌唱的に無理な役だったということなんでしょうね。第二のレイミーにはなれませんでしたが、他の役で頑張って下さい......

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babyfairy

ジュネーヴ大劇場は、昔は名歌劇場だったらしいけれど、最近はそうでもないと日本の某オペラ雑誌に書いてありましたが、なんのなんの、私は今年上演された『ドン・カルロ』公演の中では、これが一番だったと思います。

ブリニョーリ指揮スイスロマンド管の奏でる美しい旋律(どこぞの劇場の、オケと合唱は良いけれどリズムめちゃくちゃなのとか、鳴らし過ぎとかと比べて)に、うっとりしました(今でも)。もちろんグリゴーロ君が出てるから贔屓目に見てるとしても、いわゆるハデな歌手は居なくても、オルリン・アナスタソフのフィリッポ、マイケルズムーアのロドリーゴ、大審問官、カルロ5世、それにちょっとおばさんっぽい声なのが難点ではあるものの穴まで酷くない女声陣、衣裳は一番カッコいい演出。出演者皆若手だから、これからが楽しみですしね。

>第2キャストから突如第一キャストになっちゃったスチュアート・ニールとは大違い

ほんとですよ。代役迄もが全然ましじゃないですか。しかもこの人、イタリア人なんですよね。歌手で節約する本末転倒でドケチなスカラ座は有名歌手はギャラが高いからダメだとしても、せめてこういう人を連れて来るべきでしたね。
by babyfairy (2008-12-18 19:01) 

keyaki

babyfairyさん
劇場も芸術監督や常任指揮者とか、インテンダントの資質にかなり左右されますから、浮き沈みはあるでしょうね。
チューリヒもそうですが、この時も、劇場デビュー+ロールデビューですから、優遇されていますし、すごく期待もされているという証拠ですよね。
フィリアノーティがキャンセルしなければ、10月には、ここでホフマン物語だったんですよね。ジュネーヴ大劇場も、キャンセルをよく承諾してくれましたね。グリゴーロが出演なら完売間違いなしだったでしょうに。
by keyaki (2008-12-19 10:26) 

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