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オペラ的向こう見ずないたずら あるいは オペラは元気一杯!:WNO《ルクレツィア・ボルジア》 [ルクレツィア・ボルジア]

 かなり面白いレビューです。あぁ〜、ますます見られないのが悔しい!こういうのをTV放送しなくちゃだめでしょう....メトロポリタン歌劇場のゲルプ氏が見に来ていたそうですが、万一、メトで再演するにしても、ジェンナーロがグリゴーロじゃなければ、似て非なるものになってしまうでしょうね。

 『ルネ・フレミングは、ジョン・パスコが彼女のために制作した視覚的に贅をつくした「ルクレチア・ボルジア」で遅すぎたワシントンナショナルオペラデビューを果たした。フレミングはサンドラ・ラドヴァノフスキと交代で歌った。ラドヴァノフスキのほうが地元での論評はかなりよかった。
 アラーニャの「アイーダ」同様、フレミングもミラノ人のブーイングを悪魔払いする必要があったのは明らかだ。1998のスカラ座での彼女の試練は、いつもながら政治的な要素と芸術的な要素が結合した結果だった。ワシントンの観客の暖かい反応を得て、どんなに彼女が真剣に取り組んでも、彼女の声にも性格にも合っていないこの役とついに心置きなく決別することができるだろう。

 激しく燃え上がる復讐心や大貴族的所作は所詮フレミングが持ち合わせていないものだ。だから、パスコは、ルクレチアを男性社会の暴力の犠牲者として描いたので、全体的にユーゴやドニゼッティが意図したものより、穏健な描写となっている。
 実際11月11日に、フレミングは、柔らかいパッセージで相当の芸術的妙技と声の魅力に加えて、驚嘆すべきトリルをきかせた。レチタティーヴォを除いて、彼女のいつもの癖である「サラ・ヴォーン」的リズムをだいぶ抑制していた。しかし、この作品とは相容れない響きを示した。
 生の胸声と鋭い高音は劇的効果を高めるが、彼女のはドニゼッティのものではない。彼女のもっとも魅力的で適切な歌唱は一幕フィナーレのジェンナーロとの二重唱(写真右)だった。彼女は、いくつかの恐ろしい、意欲過剰のカデンツァはともかくとして、この最後の場面にとても真摯に取り組んだ。

 ヴィットリオ・グリゴーロは観客のお気に入りになった。美しく抒情的な声と歓迎すべき明瞭な発声。時にははやってパッセージを歌い急ぐというか、つまりやりすぎ。パスコは時代の男っぽさを強調したかったので、バック・ロジャースを連想させるぴちぴちの金色のパンツ姿や上半身裸のジェンナーロを登場させて、このイタリア人テノールのスポーツマン的外見を最大限利用した。
 パスコは、ジェンナーロとオルシーニを恋人同士にしたが、十分にそれらしかった。大いにいちゃついたし、その上、美しいズボン役のメゾがオルシーニ(写真左)を演じたから、混乱した観客もいた。グリゴーロは毒で死ぬ人間を非常に生々しく演じてみせた。あんなのは初めて見た。笑いを引き起こしかねないぎりぎりでとどまった。大胆だねぇ・・(七転八倒したのかしら...みたかった....)

 ライモンディはアルフォンソを劇的に力強く的確にやった。ライモンディとグリゴーロは朗唱的レシタティーヴォの扱い方の手本を示した。フレミングはその手本に注意深く従ったようだった。ライモンディは時に67歳のベテランらしい声に聞こえた。すなわち、しまりがなく、多少平板だった。しかし、大方の部分で、彼の半分の年齢のバスの名誉ともなるような明瞭さと力強さを見せた。

 オルドリッチの持つ声の大きさを超える役にしては、彼女の優雅なオルシーニはよかった。低音域では多少こもって聞こえにくいところがあった。また、ことばを軽視していた。中国人テノールYingxi Zhang (Rustighello)は明瞭でよく通るリリックな声で、巧く歌った。』 DAVID SHENGOLD 2008.12.4

関連記事:ワシントン・ナショナル・オペラ《ルクレツァイア・ボルジア》
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babyfairy

素晴らしい批評を貰ったじゃないですか>グリゴーロ君。
っていうか彼はどこでも破竹に進撃ですね。
やっぱり食べる為ではなく、あくまでもライフワーク的に『ワ〜イ、オペラだ!』と思えるからでしょうかね。オペラに関しては。放送も、DVDも無いってのがもの凄くもったいないです。

by babyfairy (2008-12-16 18:01) 

ペーターのファンです。

なんだか賞賛の嵐ですね。絶賛のレビューだけたくさん見られて、肝心の舞台は・・・。
せめてネット配信かDVDか、何とかしてほしいと思います。
ジェンナーロをグリゴーロ以外の歌手で見たいとも聴きたいとも思わないので、やはり映像に希望をつなぐことになりますが。ドミンゴは何を考えているのやら。

どこかのレーベルがグリゴーロを起用して全曲録音に乗り出してくれないかしら。
グリゴーロが歌いたい作品なら、もう何でもいいですから。

by ペーターのファンです。 (2008-12-16 20:30) 

babyfairy

今日からいよいよプッチーニ記念のコンサートですね。
放送も無いとなると余計気になりますが、頑張って欲しいものです。
by babyfairy (2008-12-16 22:20) 

keyaki

babyfairyさん、ペーターのファンさん
本当に演劇としても上出来ということですね。ライモンディも超一流の歌役者、だし、フレミングもですよね。
演出家のパスコも、イメージ通りの演出ができて大満足でしょうね。
早く、音だけでも聞きたいです。
by keyaki (2008-12-17 02:10) 

keyaki

babyfairyさん
こんなに何も分からないコンサートってありなんですか......
グリゴーロ君のメッセージもないし.....
マリオ・マラニーニは、ドン・カルロの代役をやってくれた歌手さんなんですよ。

今、HPを覗いたら、グリゴーロ君のメッセージがありましたが、何を歌うかとかは、書いてない....Buon Natale! ..だって....
by keyaki (2008-12-17 02:24) 

みど

グリゴーロ、すごい筋肉ですねぇぇ。。。。。。
by みど (2008-12-17 06:51) 

keyaki

みどさん
筋トレはしてないそうですが、恐らく休暇中は、暖かいところで、毎日泳いでるのかも....オペラのリハーサルに入る時は、かなり日焼けしてますから。
by keyaki (2008-12-17 10:38) 

babyfairy

チューリッヒ中央駅の『椿姫』のDVDが遂に出ましたよ。
スイス鉄道のサイトで買えます。内容は放送をリアルタイムで観ていた人達(私も含め)はおそらく皆観ているものだと思いますが、ブックレット付きみたいなんで、性懲りも無く買ってしまいました。

それから、グリゴーロ君、メッセージもゲストブックに掲載しましたね。いつもの通り、素敵な事を書いてます。頭の良さを感じると言うか、詩人だなあ。
by babyfairy (2008-12-17 21:35) 

keyaki

babyfairyさん
>チューリッヒ中央駅の『椿姫』のDVD
日本だったら、JRのキオスクとかで売るってかんじなのかしら...
スイス鉄道も多角経営ですね。
私も注文しました。

>グリゴーロ君、メッセージ
そろそろと思ってましたが....哲学的....
by keyaki (2008-12-18 00:51) 

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