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特別仕様のテノール Vittorio Grigolo(2004.5.10) [インタビュー&記事]

ヴィットリオ・グリゴーロ、特別仕様のテノール( Vittorio Grigolo, Tenore fuoriserie)

27才のヴィットリオ・グリゴーロ
ローマ歌劇場で《愛の妙薬》

 ローマで、ジャンルイジ・ジェルメッティ(誠実な人物で、若者たちに才能を発揮させる)指揮、ロッシーニの《スタバト・マーテル》で彼を聴いたが、それは楽しいショーだった。なぜならヴィットリオは、27才、トスカーナ出身で、ずっと首都ローマで育ち.....5カ国語、政治学で学位、いろいろなスポーツ.....活動的で、「ふりをしている」のではないことは証明済みだからだ。音楽のある家族の中、また優れた素質もあり、3才で歌をまねして歌っていた。11才で、システィーナ礼拝堂の少年聖歌隊のソリスト、13才でパヴァロッティとの《トスカ》で羊飼いの役で歌劇場にデビューした。

 それから、バスのダニーロ・リゴーザと一緒にたくさん勉強をして(今でも毎日)、多くの実地訓練をした。「僕は、ロヴィーゴで慈善の為に雨の中で歌ったし、ヴェネト州のCa' Rosa、リストランテ・ピッツェリアで《愛の妙薬》を18回、19才でウィーンで《イタリアのトルコ人》を歌った。一番最近の公演で、声が持続する限り、仕事を続けられることがわかった。」でも、あんまり先までやらない。「最高でも45-50才くらいで引退したい。僕の一番良い記憶を忘れないで欲しいから。」

父とくつろぐヴィットリオ
父も素晴しい声で、オペラへの情熱は父のおかげだ

 一方、2000年にムーティは、スカラ座でのヴェルディ年記念コンサートに彼の"メッツァ・ヴォーチェ"を見込んで彼を抜擢した。2003年には、ヴェローナでの衝撃的な《愛の妙薬》、今年は《椿姫》でデビューの予定だし、今度の7月には、カラカッラ浴場で《ヴェルディのレクイエム》.....「僕のキャリアは、もっと飛躍しなければならないけれど、いっぱい舞台経験を積むことで成熟を感じる」と彼は言明する。ところで、グリゴーロにとって歌うということはなんですか? 「歌は、酸素のようなもので、同時に自分自身のすべてのエンジンを始動させる。たぶん、祈りはそれを歌うことによってよりよく届くと言われていませんか? 僕は、舞台にたくさんの情熱をそそいでいるし、舞台上で、ヴェールなしで存在することを追求する。もしかしたら、"汚い"音が出ても、心がきれいであれば、それから音もまた変化する。」 それで、何を観客に伝えたいのか? 「まわりにいる人をたくさん愛すること、僕たちがなんのためにここに存在するのかを知ること、協調して生きること。音楽がある間、そこは平穏だ。もはや歌がそこになければ、そこには、恐怖があるだけだ。」 ところで、グリゴーロは、幸せですか? 「はい、なぜなら私は、恋をしているのと同じだから。数日前に、 "人知れぬ涙"を歌ったが、 "彼女は僕を愛している、そうだ、愛しているんだ!" という叫び声は私の恋人に叫んだ真摯なメッセージなんだ。皆とても心を動かされた。僕は、僕の声だけでなく他の何かも震えさせた。」

  しかし、オペラは、私たちのところよりむしろ外国で支持されているが、未来があるのか? 「その未来は、僕たち若者の手の中にある。僕たちは、新鮮さをそれに与えなければならないし、現実的に生きていることを示さななければならない。ポップあるいはシンガーソングライターたちは、成功しているのか? それは、彼らが人生の経験を感傷的なカンツォーネで訴える理由だし、あなたにそれを理解させる。僕は、自分が成すこと、舞台上で僕の人生を"行動する"ことをさがし求めている。」 実際、ヴィットリオにとっては、オペラだけではない。彼は、歌を歌うし、ポップ音楽(僕はボチェッリに僕の一曲を送るつもり)を書くし、非常に美しい《アメリカ》というミュージカルを作曲したし、ルーチョ・ダッラ(彼は僕をとても金持ちにした)と《トスカ》で共同制作したし、ミラノのアルチンボルディで、《ウエストサイド・ストーリー》を歌って踊った。それから、連帯運動(世界平和活動)にも熱心だ。--- 第一回赤十字ローマ国際会議では、舞台でカッラとモランディと一緒に歌った。彼は、"飢餓に対する世界的な記念日"のための歌を書いた。----(こういう活動のことを言っているようだが、よく分からんので飛ばす)そして、彼は、自分自身平安の中にいる。なぜなら「僕は次になにかためになることをしようと努力するキリスト教徒であり、信仰と神秘をたくさん感じる一人の人間」だから。そして彼は最高に美しい声を授かっている。
雑誌CITTA'NUOVA インタビュー:Mario Dal Bello 2004年5月10日 

ルーチョ・ダッラ(1943年3月4日ボローニャ生まれ)に関するメモ
★イタリアのカウンタトーレの大物。パヴァロッティが歌った"カルーソー"が有名。
★記事の中の《トスカ》は、"Tosca Amore Disperato"のことだと思う。初演は、2003年10月23日ローマのGran Teatro di Roma(グリゴーロは出演していない)
★2006年7月5日の記事《Vittorio Grigolo, il Pavarottino «Unisco il pop e l’opera lirica»に、Il Divoのメンバーになることを断ったことと、ルーチョ・ダッラの《トスカ》に出演するのもやめた、という記載がある。(E ha anche detto no a Lucio Dalla per un ruolo nella Tosca)
★2003年12月30日:Lucio Dalla canta il Rossini sacro グリゴーロ共演
★ルーチョ・ダッラは、ルッジェーロ・ライモンディとも親しい、彼の長男ラファエッロ(写真家)と一緒に仕事をしている。


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コメント 11

rosina

そんなに早く引退予定なんですか〜〜。でも、確かにテノールはバリトンやバスよりも短命なのかもしれませんね。でも、じゃあ、来年からは頑張って聴きに行かないと^^;。早く来年のイタリアの歌劇場での予定が知りたいですが、イタリアって発表遅いんですよね。

それよりも、グリゴーロ君も良いネモリーノになりそうですね。又歌わないのかしら。またはこの録音とか映像は無いのでしょうか。 
by rosina (2008-07-19 01:58) 

euridice

ペーター・ホフマンの伝記を2冊読みました。ドイツ語でしかも日本語にしましたから熟読しました^^;;

こちらの記事を読んできて、そして、この新記事で再び、
ホフマンとの共通性をとても強く感じさせられます。
時代、出身地、生い立ち、レパートリーなどはとても違うのですけど、
音楽に対する考え方や職業、人生に対する姿勢が、ほぼ同じなのは、驚くほどです。

http://www.geocities.jp/euridiceneedsahero/
by euridice (2008-07-19 06:47) 

rosina

グリゴーロ君がローマでネモリーノを歌った時と同じ演出の『愛の妙薬』つながりで、こちらとTBさせて頂きましたので、事後報告で申し訳ないのですが、御知らせいたします。
by rosina (2008-07-19 08:48) 

keyaki

rosinaさん
>そんなに早く引退予定なんですか〜〜
こういう発言は、若者にありがちなもので、その年齢になったらまた考えが変わったりもしますからね....

>ネモリーノ
チャレンジ精神旺盛なようですから、新しい役も歌いたいでしょうし、また歌うかどうか...10年後に歌う可能性がないとはいえませんけど。

TBありがとうございます。
それにしても、あのフィレンツェの写真には吃驚です。こんな偶然ってあるんですね。彼のHPに写真がありますが、いつもはかっこよくきめているグリゴーロ君のこの格好、いいですね。孫にも衣裳の反対バージョンですけど、さすが上手に着こなしています。(笑
http://www.vittoriogrigolo.com/foto_gallery_stage_100.php

by keyaki (2008-07-20 09:10) 

keyaki

euridiceさん
前にも読ませていただきましたが、改めて読むと、本当に考え方とか似てますね。こういう真摯な面は、なかなか一般メディアでは取り上げられないので、見た目のかっこよさでの先入観みたいなものが強調されがちですよね。特にオペラ界は、容姿の良さがそのまま素直に受け入れられないという特殊でいびつな世界のような....ほとんど評論家の責任ですけどね。

グリゴーロもイギリスの新聞では、プレイボーイとか書かれてます(女ではなく趣味の方ですよね)けど、イタリアでは、ちょっと違うようですね。まあ、彼の経歴を見ると、勉強、慈善、平和活動にも熱心で、天から授かった素晴しい声を持っているということで、みんなの期待を一身に受けているという感じですね。

英語圏のメディアで"Italian Stallion "なんて書かれてましたが、これってロッキーのリングネームですよね。そういえば、シルヴェスター・スタローンとのツゥーショットの写真もありましたよ。
by keyaki (2008-07-20 09:33) 

Sardanapalus

ネモリーノがいい男では問題ありかもしれませんが、この衣装と髪型かわいいですね♪(^^)

>グリゴーロもイギリスの新聞では、プレイボーイ
イギリスでは「イタリア人=プレイボーイ」ですから(笑)特に、グリゴーロほどかっこいい若い男性でスポーツカーとかファッションに興味があるなんていうと、一般的なイギリス人男性とは対極ですから、「かっこいい上に女性とも上手く会話できて羨ましいなぁ」という、いわば僻みも入った言葉でしょうね。

>"Italian Stallion "
英語圏はこういう言葉遊びが好きですからね(^^)イタリア人+マッチョからイメージしたんでしょう。きっと、記事を書いた人は「よっしゃ!いい言葉を思いついた!」って得意げに使ってるんですけど、マイナーな例えなので読者の半数は「?」でしょうね。
by Sardanapalus (2008-07-20 23:32) 

keyaki

Sardanapalusさん
>イギリスでは「イタリア人=プレイボーイ」ですから(笑)
日本でもそういうイメージかもしれませんね。確かに男がおしゃれっていうかファッションに関心がありますよね。イギリスや日本のように、所謂ダークスーツは着ませんものね。

こんなのもありましたよ。
He has dark Latin Looks, tousled curly hair and is undoubtedly the Special One.No, not Jose Mourinho-this is Vittorio Grigolo, .....
Jose Mourinhoって知りませんでしたが、画像検索したらわんさか出てきました。どこかのサッカーチームの監督なんですね。かっこいいですよね。彼のカレンダーまであるんですね。

ところで、Sardanapalusさんは、イギリスのヒットチャートのこともよくご存知だと思いますが、Classical Advisory Panelというアルバムのチャート会社?が、彼のアルバムを基準外とかで認めなかったんですって。なんでもアルバムの60%以上が、クラシック系じゃないとダメなんだそうです。グリゴーロのは、ウェストサイドのマリアとRoma Sognaの2曲がクラシック系で、全体の 35.7%で、落選。ポリドールのスポークスマンが、"We’re shocked at the snobbery in the classical world."と言ってます。
いろいろあるんですね。まあ、オペラのアリアとか歌えば、クラシック系なんでしょうけど、オペラ歌手がオペラのアリアを歌ったんじゃ、普通のアリア集ですものね。マリアとRoma Sognaの2曲がクラシック系という分類もよくわかりませんけどね。
by keyaki (2008-07-21 00:27) 

euridice

>あんまり先までやらない。

ペーター・ホフマンは1983年の伝記の中で、
『人々が人生真っ盛りじゃないかと言う時に降りることはすばらしいと思います』
と言っています。
by euridice (2008-07-21 10:14) 

keyaki

euridiceさん
1983年の伝記で、その時の心境だったら重みがありますね。
シミオナートもまだまだ歌えるじゃない...という時期に引退したと語っていますので、いくつだったのか調べたら、56才だったんで、なぁんだ...なんて思ったことがあります。

by keyaki (2008-07-21 15:12) 

Sardanapalus

反応が遅くなってごめんなさい。

>Jose Mourinho
そうそう、もう退任してしまいましたが、チェルシーという強豪サッカーチームの監督でした。大胆な発言で毎度マスコミを騒がせていて、「俺は特別なのさ」"I'm the Special One."というのは、彼の発言の中でもよく使われていたのです。しばらくは、the Special Oneといえばモウリーニョ、と言う状況でしたから、引き合いに出したのでしょう(^_^;)

>Classical Advisory Panel
>アルバムの60%以上が、クラシック系じゃないとダメ
60%以上のクラシック曲を使っていなかったから、クラシックのランキングでは集計できなかったのですね。もし、許可されていたら当然1位だったでしょうね。

>マリアとRoma Sognaの2曲がクラシック系という分類もよくわかりませんけどね
他はポップス曲とか、イタリア音楽とか、そういう分類にされてしまったのでしょうか?何だか馬鹿らしい分類ですね。
by Sardanapalus (2008-07-25 22:25) 

keyaki

Sardanapalusさん
>the Special Oneといえばモウリーニョ
なるほど、容姿が似ているというだけではないということですね。

イギリスは、音楽大国なんですね。
Classical Advisory Panelのことは、クルト・ワイルの歌曲がほとんどなのに、やっぱりクラシックに入れてもらえなかったというのも話題になってました。
グリゴーロとしては、自分はあくまでクラシックの演奏家なんだから、何を歌ってもクラシックのジャンルに入るんだ....という考えなのかなぁ..確かにそういう分類も有りだとは思います。
ヒットチャートに入るということは、レコード会社としても戦略的に重要なことでしょうから、こういうことが話題になるんですね。
by keyaki (2008-07-26 21:22) 

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